香ばしい煙の先に、アマビエ?――。茨城県笠間市のウナギ屋に、風変わりな化粧顔でウナギを焼く男性の姿がある。名付けて「ウナビエ」。コロナ禍で沈みがちな世相を吹き飛ばす陽気な「妖怪」が、21日の土用の丑(うし)の日も店に立つ。
ウナビエに扮するのは、同市笠間にあるウナギ屋「量深(りょうしん)」の店主、馬場万作さん(48)。自ら仕入れた墨や白粉を顔にたっぷり塗り、ねじりはちまき姿で店先の焼き場に立つ。化粧のポイントは「とにかくど派手に」。傍らには、カラフルなうろこをあしらった人魚風のイラストも。「いらっしゃーい!」。声を張り上げると、入店しようとする客も思わず相好を崩す。
外国人観光客が増えた3年ほど前、歌舞伎役者さながらのくま取りで店に立つように。動画サイトで役者の動きを研究し、店内でみえを切ると大受けした。
だが、この春はコロナ禍で売り上げが6割ほど落ち込んだ。「世の中全体が暗いからこそ、店を明るくできないか」。ひらめいたのが、疫病よけの伝説がある妖怪として注目を集めたアマビエを模した化粧だった。くま取りを応用し、ウナギを意識して青色も採り入れた。新たに始めた宅配にも、そのまま出かけていく。「警察に不審がられないか心配だけど」。SNSで話題になり、他県から来る客も増えたという。
もともとは山芋を使った「麦とろ」を看板にする店だった。ウナギ屋として再出発したのは2013年。若い頃に修行した東京のウナギ屋の閉店を機に、店主からタレを受け継いだためだ。割いたばかりの新鮮なウナギを、備長炭でじっくり焼く。「祭りもイベントも中止じゃあ、季節感がないでしょうよ。丑の日ぐらいはおいしいウナギを食べて、季節を感じてよ」(久保田一道、林将生)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル