国の天然記念物で東京・小笠原諸島だけにすむチョウ「オガサワラシジミ」に絶滅の可能性が出てきた。2年間ほど島での生息が確認できていないほか、島外で飼育してきた個体も8月までに全て死んだ。近親交配による繁殖能力の低下などが考えられるという。環境省が27日に発表した。
オガサワラシジミは全長十数ミリの小型のチョウ。かつて小笠原諸島に多数生息していたが、外来種のトカゲに食べられるなどして激減。近年は母島で少数確認されるのみだったが、2018年6月以降、母島でも生息が確認できていない。
種の存続のため、05年から多摩動物公園(東京都日野市)で飼育下での繁殖の試みを開始。19年度からはリスク分散のため、新宿御苑(東京都新宿区)でも動物公園から譲り受けた個体の繁殖を続けてきた。しかし今春から個体の有精卵率が急激に低下して幼虫が生まれなくなり、8月25日までに飼育していた全ての個体が死んだという。
絶滅の恐れがある生き物をまとめた環境省レッドリストでは、オガサワラシジミは、ごく近い将来、野生で絶滅の危険性が極めて高い「絶滅危惧ⅠA類」に分類されている。24年度以降に予定されている次期レッドリストの公表までに新たに生息が確認できなければ、日本産チョウの絶滅第1号となる可能性もある。
環境省は「今回の結果を重く受け止め、今後、専門家を交え、原因を分析し、絶滅危惧種の保全対策に生かしてく」としている。今後も小笠原諸島でのオガサワラシジミの生息調査や外来種対策は続けて、生息が確認された場合は、速やかに保護対策に取り組むという。(水戸部六美)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル