新型コロナウイルスの感染拡大による政府の緊急事態宣言を受け、警察が夜間の繁華街などでパトロールを強化している。休業中の店舗を狙った空き巣などを警戒する目的だが、自治体側の要請で外出自粛に協力を求める「声かけ」も行う。ただ、声かけに法的根拠があるわけではなく、犯罪の摘発を目的とした「職務質問」との線引きに苦心もうかがわれる。
■繁華街一変、犯罪に警戒
17日夜。東京・新橋の繁華街を、制服姿の警察官2人が巡回した。マスクを着け、手には警棒。普段は酔客でにぎわう金曜の夜だが、通りのシャッターは軒並み閉まり人影はほとんどない。管轄する警視庁愛宕署幹部は「いつもの街とは一変している」と警戒感を強める。
「客引き行為はだめですよ」。新宿・歌舞伎町でも連日のように、巡回中の警察車両の拡声器から注意が飛んでいる。
歌舞伎町では、都の外出自粛要請後に客足は減ったものの、「キャッチ」と呼ばれる違法な客引き行為は続く。飲食店は都の休業要請の対象外だが、午後8時までの短縮営業を求められた。休業した店舗も多いが、ガールズバーの客引きをしていた男性は「翌朝まで開けている店も少なくない」と話す。
ただ、人影は各段に減り都内各地の繁華街の様相は一変。休業中の店舗は窃盗被害に遭いやすく、大阪府の繁華街では酒や釣り銭などを狙った空き巣が多発。神奈川県でも金庫破りや侵入盗が増加しているといい、首都を預かる警視庁も警戒感を強める。
■職務質問とは一線
7都府県を対象とした緊急事態宣言が出された7日、警察庁は都道府県警に対し、通常の法令の枠内で必要に応じたパトロールの実施を指示。防犯活動に加え、各知事からの要請などを踏まえ「外出自粛要請にご協力ください」との声かけも行うようになった。
声かけと職務質問は異なる。後者は警察官職務執行法に基づき、罪を犯したり犯そうとしたりしている人などに限定される。緊急事態宣言に伴う外出自粛要請に強制力はなく、警察権限を拡大する規定もない。
このため、警視庁幹部は「外出の理由を尋ねたり、帰宅を求めたりすることは職務質問の性格を帯びかねないため、慎んでいる」と説明。警戒中の警察官が手に持つ警棒も「パトロールには危険も伴うため、内規で定められたルールで威圧する意図はない」(警察幹部)と話す。
■コロナ関連の通報増
外出が減ったためか都内では、110番通報が前年同期比で3割ほど減る一方で、新型コロナ関連の通報が急増。2月に24件だった件数は、3月に192件、4月は13日時点で370件に上った。
店が営業している▽人が集まっている▽夫婦・親子でけんかになった▽出かけようとする子供を注意してトラブルになった-など休業要請や外出自粛をめぐるものが目立つ。
換気のために店舗の窓や入り口を開放していることで、「客の声がうるさい」と通報されるケースもあるという。要請や自粛を全面的な「禁止」と混同していたことによる通報も少なからずあり、警視庁幹部は「現場に臨場した警察官が緊急事態宣言の内容について丁寧に説明する必要性を感じている」と話した。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース