コロナ禍で時短営業などの要請に応じた飲食店に支給される東京都の感染防止対策協力金をめぐり、新たな詐欺の手口が確認された。都の担当部局や弁護士を装って店主に「不正受給」を指摘、違約金を振り込ませようとするものだ。都は注意を呼びかけている。連絡先となっている「弁護士」を、記者が電話で直撃した。
東京・新橋のスナックに21日、文書が届いた。「東京都」と印字された封筒にはA4判の「督促状」が5枚入っていた。
文書は「『東京都感染拡大防止協力金』の不正営業に関する都の対応について」という題。「『営業時間の短縮と21時以降の酒類の提供を取りやめた』と偽って協力金を請求した。違約金を支払わなければ、協力金は支給しない」と書かれていた。18日付で、送り主は都産業労働局から委任されたという「重田有都弁護士」、宛先はスナックの店名だった。
都が時短要請などを緩和した10月の「リバウンド防止期間」の深夜に酒類を提供したとして、違約金18万円を求めていた。「拒否すれば協力金は支給せず、応じれば店名を公表せずに厳重注意にとどめる」といった記載もあった。振込先の口座番号や「弁護士事務所」の電話番号があり、「相談窓口」として都産業労働局の偽の電話番号が書き添えてあった。押印もあった。
ただ、店はこの期間は休業していた。店側が「弁護士事務所」に問い合わせると、電話口の男は「不正に営業した証拠がある」と話し、違約金を「至急振り込むように」と迫った。
弁護士会などに確認し、「重田有都」という弁護士が実在しないとわかった。店長の30代女性は「身に覚えのない請求だが、本物かと思った。切手や消印がなく、犯人が店まで投函(とうかん)しに来たと思うと怖い」と話す。後日、警察に相談したという。
都産業労働局はこうした督促状を発行していないといい、担当者は「詐欺の手口。不審に思ったら連絡してほしい」と話した。実際に被害が出ているかは確認できていないという。問い合わせ先は感染拡大防止協力金等コールセンター(0570・0567・92)。
実在しない「弁護士」の言い分は
飲食店に届いた文書の送り主という「弁護士」の事務所にはウェブサイトがあり、所属弁護士だとする男女の写真や経歴が並ぶ。
記者が日本弁護士連合会に確認したところ、弁護士は実在しなかった。事務所の所在地も偽りだった。
巧妙な手口を仕掛けているのは何者なのか。問い合わせ先に電話すると、弁護士を名乗る男が出た。男は記者の問いに次のように答えた。
――重田弁護士ですか…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル