会社法違反などで起訴され、15億円の保釈保証金を払って保釈中だった前日産自動車会長のカルロス・ゴーン被告(65)が極秘に日本を出国し、国籍があるレバノンの首都ベイルートに滞在していることが31日、分かった。保釈条件で海外への渡航は禁止されている。
ゴーン被告は「不正な日本の司法制度の人質にはならない」と声明を発表。4月にも予定されている初公判を前に確信犯的に逃走者となったとみられる。
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ゴーン被告のパスポートを保管している弁護団も寝耳に水の事態だった。弘中惇一郎弁護士は「25日に公判前整理手続きで会った。寝耳に水でびっくりしている。裁判所には『こちらも困っている』と申し上げる。今後、情報が入れば、裁判所に提供していきたい」と困惑しきった様子で話した。
出入国在留管理庁のデータベースにも出国記録は残っていない、極秘出国。信ぴょう性は不明だが、レバノンの主要テレビMTVは電子版は「楽器の箱に隠れ、日本の地方空港から出国した」と報じた。欧米メディアによると、ゴーン被告はトルコからプライベートジェット機でベイルートに30日夜、到着したもようだ。
ゴーン被告は米国の広報担当者を通じ、「私は今、レバノンにいる。有罪が前提とされ、基本的人権が無視されている不正な日本の司法制度の人質ではなくなる」と声明を発表した。
東京地裁はゴーン被告の初公判は4月下旬に開く方向で調整していた。ゴーン被告は、公判前整理手続きなどを通して、裁判となっても不利な状況は変わらないと判断し、無断出国を選んだとみられる。
フランス紙フィガロは、関係筋の話として日本の司法制度から逃れ、レバノン入りしたと報じた。米紙ウォールストリート・ジャーナルは「公平な裁判を受けられないと考えている」と理由を挙げた。ベイルート在住のゴーン被告の友人リカルド・カラム氏は「どのような手段であれ、ゴーン氏は新年を前に自由の身になった。全ての人は真実を声高に語る機会が与えられるべきだ」とツイートした。近く記者会見するとの情報もある。
ゴーン被告は18年11月、金融商品取引法違反容疑で東京地検特捜部に逮捕され、19年3月、保釈された後、4月に特別背任で再逮捕。追起訴後、4月25日に再び保釈が認められた。保釈条件は<1>保釈保証金15億円<2>居住制限と玄関の監視カメラ<3>海外への渡航禁止<4>パスポートは弁護士が保管<5>3日以上の旅行は裁判所の許可などで、妻キャロルさんや、レバノンの事件関係者との接触も禁止されている。
◆保釈時VTR ゴーン被告は今年3月6日に東京拘置所から保釈された際、青の帽子に上下グレーの作業服、眼鏡にマスクで顔を覆う変装姿で現れた。弁護団の1人が知人に依頼して用意したもので、作業服専門店「ワークマン」製。10人近い刑務官に囲まれて歩いたが、報道陣も当初本人かどうか気づかなかった。移動の車もわざわざ、大型ワゴンではなく軽自動車ワゴン「スズキ・エブリィ」を用意する周到さだったが、トレードマークの太いまゆが見えていたことから本人とばれた経緯がある。4月に4度目の逮捕の後、再度保釈された際は、黒のスーツだった。
◆レバノン共和国 紀元前3000年の古代フェニキアからの歴史を持つ地中海に面した国。首都ベイルート。第1次世界大戦後にフランス統治に入り、1943年に独立。ベイルートは「中東のパリ」と呼ばれ、金融国際市場、リゾート地として栄える。75年に内戦が始まり、90年に終結。面積は岐阜県程度の大きさで1万452平方キロメートル。18もの宗派が国内に存在する多宗教国家。フランス統治下時代の32年から国勢調査が行われていない。その理由は当時、各宗派に政治権力が配分されており、政治的配慮からともいわれる。外務省HPによると、人口は推定約610万人(18年現在)だがブラジルを中心に世界中に離散しており、国外レバノン人の人口は本土を大幅に上回るとされる。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース