「サンタって本当にいるの?」。子どもや孫に聞かれたら、どう答えていますか。ベストセラー『豊かさとは何か』で知られる経済学者の暉峻(てるおか)淑子(いつこ)さん(94)は、子ども向けに1冊だけ書いた絵本で、この問いに正面から向き合いました。
暉峻淑子さんから逆質問
暉峻さんへのインタビューは、記者(35)とフォトグラファー(29)への逆質問から始まりました。
「あなたたちは、サンタクロースが来た子どもだった?」
――はい、来てくれました(フォトグラファーもうなずく)。
「そう。昔、保育園に通っていた長男(映画評論家の暉峻創三さん)から、『うちはサンタ、来なかったよ』ってぼそっとつぶやいてたっていう友達の話を聞いてね。その視点を抜きには、サンタのことは語れないと思っています」
――著書『サンタクロースってほんとにいるの?』でも、親が「こないうちもあるのはなぜ?」と子どもに聞かれるページがありますね。
「あのページで親の答えをどう書くか悩みに悩んで、2年以上筆が止まったんです。この本の絵を描いてくれた杉浦範茂(はんも)さんも、子どもの頃、うちにはサンタは来なかったとおっしゃっていました」
「うそじゃないの?」と聞かれた時は
――そもそも、この絵本を書いたのはなぜですか?
「50歳の頃、出版社から、子ども向けの本を依頼されました。経済が専門なのでお金についての本はどうですかと編集者に言われましたが、気乗りがしませんでした」
「雑談の中で、『あなた方出版社は、子ども向けにサンタの本をたくさん出して、かなりもうけたでしょう。でも、子どもはいつか本当のことを知ります。その後の子どもの心のことも考えた本を作って』と口にしてしまったんです」
「編集者にはその場で、『では暉峻さんが書いてくださいませんか』と言われました。もちろん断りましたが、何度も何度も頼まれて、いつのまにか私が書くことになりました」
――書くにあたって、子どもに対してうそをつかないために、発想の転換をしたそうですね。
「『サンタはいない。あれは…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル