アメリカのトランプ大統領が5月25日、来日します。元号が令和になって初の国賓で、26日には両国国技館で大相撲を観戦する予定です。報道によると、安倍晋三首相の提案をアメリカ側が受け入れ、要人が通常利用する貴賓席ではなく、土俵近くの升席に陣取ることになり、警備態勢は相当厳しいものになることが予想されています。
建築家で、文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏は、トランプが大相撲を観戦することについて「いいところに目をつけたかもしれない」と指摘します。トランプ大統領の政治手法と大相撲にどのような関係があるのでしょうか? 若山氏が独自の「文化力学」的な視点から論じます。
オバマは広島・トランプは相撲
アメリカのトランプ大統領が大相撲の千秋楽を観戦し、優勝力士にトランプ杯を授与するという。これまでも相撲が親善に使われることはあったが、ことトランプとなるとにわかに政治臭を帯びて、警備はひとかたならぬものとなるようだ。僕の知り合いは、チケットサイトでいったん得たはずの権利が相撲協会の拒否で無効になったという。
前任者、オバマ大統領の広島訪問は、日本人なら誰もが好感を抱いたように思う。僕自身、何か胸のつかえが下りるような気がしたものだ。とはいえ平和記念資料館の訪問がいかにも短時間で、あの悲惨な展示を見るいとまもなく、形式重視の感があった。
オバマは広島、トランプは相撲。これはいかにも両者の政治姿勢と人間性を表している。オバマの広島訪問を評価したマスコミも、トランプの相撲観戦に関しては批判や皮肉がまじったコメントとなって、高くは評価はしないであろう。升席でイスに座ることやきびしい警備で、本来の相撲ファンにはハタ迷惑なところもある。しかし一般庶民は、それなりに親近感をもつのではないか。
最後の三戦しか観ないというが、形式重視とはいわれないだろう。トランプは本当に相撲を見たいのであり、その無邪気さがかえって日本人に好感を与えるように思う。広島は平和のシンボルであり戦争反対のシンボルであるが、大相撲は日本そのもののシンボルであり、神事でもあり、国技でもあり、天皇にもつうじるもので、単なるスポーツとは異なる重要な伝統文化なのだ。トランプはいいところに目をつけたかもしれない。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース