山崎輝史
普段は聞き流してしまいそうになる防災無線が、行方不明の高齢者の保護に結びついた。愛知県警知多署は、高齢女性を保護した続山清継(つづきやまきよつぐ)さん(72)=知多市新舞子=に感謝状を贈った。続山さんは「注意して防災無線を聞いていて良かった」と話した。
署によると、12日午後、70代後半の女性が市内の自宅を出て行方が分からなくなった。午後4時ごろ、女性の不在に気がついた家族が通報。署は警察犬の手配など捜索を始めると同時に、午後7時半ごろ、市内110カ所の防災無線のスピーカーを通して情報を流した。
そのころ、続山さんは自宅に帰ってこないネコを心配して捜しに出ていた。「もう暗く、風が強くて寒い日だった」。
後ろを歩いている女性が
すると、防災無線が流れた。「聞き流しちゃうこともあるけど、いつもより遅い時間帯で、命に関わる放送。注意して聞きました」
黒いズボンで身長145センチ――。後ろを歩いている女性にそっくりじゃないか。さらに女性は真っ暗な川の方向へ向かっている。「こりゃ、やばいな」
放送で流れた名前で声をかけた。女性は「娘に怒られるから……」と繰り返した。
女性を自宅へ招き入れて、通報した。妻とともにお茶とお菓子を出すと、勢いよく食べ出したという。
「安心した様子でした。おなかがすいていたんでしょう」。捜していたネコはいつの間にか帰宅し、女性に寄り添っていたという。
23日に感謝状を贈った兵道洋一署長は「素早く行動していただき、大変ありがたい。有事に防災無線が役立つという認識を新たにしました」。
続山さんは「これから、我々団塊の世代がより高齢になり、道に迷う人も増える。防災無線もより聞きやすくしてほしい」と話した。(山崎輝史)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル