新型コロナウイルスに対する特別措置法に基づく緊急事態宣言の対象から大阪、京都、兵庫の3府県が解除されたことを受け、3府県は一部の事業者への休業要請をさらに緩和、パチンコ店も対象から外され、街では休業していた店舗が次々と再開している。しかし、パチンコ店をめぐっては、休業要請に応じないとして各地で店名が公表された経緯があり、業界への風当たりは強い。要請に応じて休業していた店にも、しわ寄せが及んでいる。
大阪市北区のパチンコ店。4月9日から営業を自粛していたが、大阪府の休業要請の一部解除を受け、今月16日から営業を再開した。店内では、それぞれのパチンコ台に除菌用のおしぼりが置かれ、席に座ろうとした客はおしぼりを手に取り、立ったままパチンコ台や手を丁寧にふき取っていた。
さらに、客にマスクの着用を義務化し、持ち合わせていない場合は、1枚のみ無料で提供。店員も客が入れ替わるタイミングでこまめに台のボタンやレバーを消毒している。
それでも再開後の客の入りは少ない。「これまでなら週末は多くの客でにぎわっていた」という40代の男性店長は「営業再開日は土曜日だったが空席が目立った。客入りはいつもの半分ほどの状態が続いている」とうなだれる。
背景にあるのは、業界全体に吹き荒れる“逆風”だ。4月24日、大阪府が休業要請に応じない府内の大型パチンコ店6店舗を全国で初めて公表。その後も各地で同様の公表が相次いだ。さらに兵庫県と神奈川県は5月1日、民間施設の使用制限で最も強い措置である特措法45条3項に基づく休業指示を出すまでにいたり、営業を続けるパチンコ店やそこに集う利用者に強い批判が集まった。
店長は「緊急事態宣言が解除されても堂々とパチンコ店に行ける雰囲気には当分ならないと思う。真面目に休業していた店が損をするのはおかしいという思いはあるが、今は消毒などを徹底してパチンコ店でクラスター(感染者集団)を出さないことに注力する」と話す。
府内の7割のパチンコ店が加盟する大阪府遊技業協同組合(大阪市中央区谷町)によると、感染拡大や休業の影響かどうかは明確ではないが、複数店舗から間もなく廃業するとの連絡が入っているという。永野秀樹事務局長は「店名を公表されたのは同組合に加盟していない店舗だったとはいえ、パチンコ業界への世間の風当たりは強くなっている。今後どうなるか、各店舗は非常に不安に思っているだろう」と推し量った。
■ネットカフェも客足戻らず
インターネットカフェや漫画喫茶もパチンコ店同様「遊興施設」とされ、各地で休業要請が出ていたが、一部では感染対策の実施や苦しい経営状況などを理由に、ゴールデンウイーク前後から営業再開の動きは広がっていた。ただ、島根県では休業要請に従わなかったネットカフェの店名が公表されるなど、パチンコとともに批判にさらされたことも。全面的に休業対象から外れた今、客足は戻っておらず、苦しい経営が続いている。
全国でネットカフェを展開する大手運営会社は、4月14日から約200店舗を休業したが、同月24日から再開。このうち松江市の店舗については店の利用者の感染が確認されたことなどから、島根県が休業要請を行い、店名を公表していた。担当者は休業要請中の営業再開について「1人で利用する客が大半で密集しない。ネットカフェで寝泊まりする人もいるので、社会的インフラとしての役割も果たしていきたかった」と説明する。
大阪府内の別のチェーン店も5月7日から営業を再開していた。利用者にはマスク着用と検温を要請。1時間に1回は換気し、ダーツやビリヤードの席もビニールで仕切っている。それでも、対策を説明すると帰ってしまう客もいるという。店の関係者は「前年同期比で売り上げは6~7割減った。営業は続けるが正直、かなり厳しい」と打ち明ける。
別の全国展開する運営会社では、再開後もシャワーなどの共有スペースは使用不可とし、食べ物の提供もしていない。一方でテレワークでの利用を呼びかけているが、売り上げは8割ほど減少し、閉店する店舗も出ている。関係者は「第2波がきたら、もうもたない」と先行きへの不安を吐露した。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース