新型コロナウイルスの感染拡大に伴う自粛要請で、様々なイベントや舞台・収録などが中止になり、出演などを予定していたフリーランスの働き手は収入が激減しています。生活が暗転した当事者からは、「自粛には補償を」との悲鳴が。俳優や声優たちの声からは、フリーならではの立場の弱さも浮かび上がっています。
新型コロナウイルスの感染拡大のあおりを受ける労働者やフリーランス(個人事業主)の方々の体験談や不安の声を集めています。朝日新聞労働チームまでメール( t-rodo@asahi.com )でお送りください。
仕事キャンセル続々
「メールが怖くて見られない」
東京を中心に、様々なイベントに呼ばれて催しの進行や盛り上げを担っているフリーランス(個人事業主)の司会業の女性は、こう悩みを吐露する。
拡大する長年、フリーランスで司会業をしてきた女性。スマホで管理しているスケジュールは中止や延期が相次ぐ=2020年3月、東京都内、吉田貴司撮影
新型コロナの感染拡大を受け、安倍晋三首相は2月末に大型イベントの自粛を要請。4月に入ると緊急事態宣言も出て、ほぼ全てのイベントが中止や延期になった。仕事を取り次ぐ所属事務所からのメールは、キャンセルを告げるものばかり。2月は5本、3月は10本、4月は8本の仕事がなくなった。
「損害100万円超」
要請を受けて興行主や主催者がイベントを自粛しても、国からの補償はない。これでは出演予定者への配慮も見込みようがない。女性も、キャンセル料は一部を除いてもらえるめどはたたない。「損害は100万円を超えそう」。語る表情は暗い。
フリーの司会者として長年、マイク一本で勝負してきた。東京五輪・パラリンピック関連のイベントで司会を務めた際は、数百人の観衆をひきつけ、イベントをまとめ上げた。「プロとして、プライドを持って仕事をしてきました」。せっかく培ってきた技術やノウハウも、イベントが開かれなければどうしようもない。
拡大する司会業の女性のスケジュール帳には「中止」や「延期」といった文字が並ぶ。一方で、いつ仕事が入るかわからないため、美容室やネイルサロンへの出費は変わらないという=2020年3月、東京都内、吉田貴司撮影
「正社員には対岸の火事」
2011年の東日本大震災の後も、関東地方では「自粛ムード」もあって約2カ月にわたってイベントが休止になり、苦しい思いをした。だが、今回は全国的に人が集まることを避けるように国から求められる異例の事態だ。「終わりが見えない恐怖は、当時とは比べものにならない」
フリーである以上、会社員と同じだけの保護を受けられるとは思わず、「この商売は水物」と肝に銘じてきた。それでも、ネット上などで「フリーなんだから、自己責任」という意見を目にすると、気がめいる。「出勤しなくても賃金が保証される正社員の皆さんにとっては、対岸の火事なのでしょう」
俳優ら「生きる危機」
3月5日。俳優の西田敏行さんの名前が付された1通の要望書が、安倍首相らに提出された。
「出演者へのキャンセル料等の…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル