独創的な色使いや大胆な柄で知られるフィンランドのテキスタイル・ブランド、マリメッコの布を、「わび」の茶室にどう合わせるか――。大阪市立東洋陶磁美術館(大阪・中之島)で開催中の「マリメッコ・スピリッツ」展(~10月14日)で、日本の茶室建築家が新たに設計し、マリメッコがデザイン監修した「マリメッコ茶室」が展示されている。対話を重ね、互いの美を融合させた空間だ。今年はフィンランドとの外交関係樹立100周年。
初めての八角形
茶室は八角形。3畳余りと小さいが、茶の準備をする水屋を備えた本格的な草庵(そうあん)だ。原案は「フィンランド人と茶席に入るなら、円に近い形に」と言う東洋陶磁美術館・出川哲朗館長による六角形のスケッチ(図1)。これを元に、茶室建築家の飯島照仁さんが八角形の茶室を設計・考案した(図2)。
「千利休が好んだ『丸み』、やさしい形の茶室を考えました」。これまで100件ほどの茶室を作ったという飯島さんだが八角形は初めて。3畳に板畳を入れて作り出した。
内外は、マリメッコのファブリック(布)で彩られている。
外側には、不ぞろいな丸い「石」が並ぶデザインで、近くを流れる堂島川のイメージとつながる「Kivet(石)」と、水と緑の自然を表す「Hyasintti(ヒヤシンス)」。
室内の壁には、植物が生い茂る「Letto(湿原)」が使われ、おなじみの「Unikko(ウニッコ/ケシの花)」柄は水屋に。亭主が水屋から茶席に出入りする際、客にちらりと見える仕掛けだ。
あくまで「利休の空間」を
どのファブリックをどのように使うか。茶室の制作過程で、美術館は飯島さんのアドバイスを受けながらマリメッコとやりとりを重ねたという。飯島さんは「千利休の『自然』を念頭に、茶の伝統とマリメッコとの融合をめざしました」。
昔ながらの草庵の内装では、壁の下部に和紙を貼って意匠を切り替える「腰張(こしば)り」が施され、天井にも変化を付ける。ファブリックを当てはめ、一つの空間に複数のマリメッコの柄を使うデザイン案(図3=初期構想)を提案したところ、マリメッコからは、一つの空間に一つの柄、白い天井という回答があった(図4)。
東洋陶磁美術館の学芸員、宮川智美さんは「部屋の壁紙としてなら、一つの空間に一つの柄は自然な発想。この回答で、私たちとマリメッコとは発想の前提が違うと気づきました。なぜ私たちが複数の柄を選んでいるのかを理解してもらう必要性を感じたのです」と話す。
このため、宮川さんら美術館側は、茶室を構成するデザインや意味についてマリメッコに改めて説明。特に強調したのは「腰張(こしば)り」の必要性だ。壁の保護などのほか、デザイン的に室内の美しさを引き立てる効果があり、無地の和紙を使うことが多い。
すると、マリメッコからは、「マリメッコの柄と日本の伝統的な(和紙の)『腰張り』を一緒に使えば、二つの文化がどのように調和するかを見せる、現代的で斬新な方法になるのではないか」という回答が寄せられた。昔ながらの草庵の意匠にならって変化をつけつつ、柄は抑えめとなった。
和紙を貼るのはOK
受け入れられなかった手法もあ…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル