2016年にユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録された国内33の「山・鉾(ほこ)・屋台行事」。その3分の1が東海3県に集まる。愛知県犬山市の元市長で犬山祭保存会の石田芳弘会長(77)は、3県の保存団体によるネットワークづくりをシンポジウムなどで呼びかけている。独自の伝統を誇る祭りの連携が必要という。そのわけを聞いた。
――3県ネットの準備会が発足したそうですね。
この10年、学校法人至学館コミュニケーション研究所で所長を務め、祭りの果たす役割を考察しています。昨年9月に愛知県半田市で日本の祭りの未来を考えるシンポジウムを開いた際、保存団体に集まってもらい、定期的に意見交換することで合意しました。今年8月の第2回会合では「ユネスコに登録された祭りは、他の祭りとは違う使命があるのではないか」と提案しました。
人と人との出会いをつくる祭り
――祭りの役割や使命とはどのようなものですか。
祭りは人と人との出会いをつくり、コミュニティー(地域社会)を成立させます。一粒一粒がばらばらな砂のような社会を粘土のようにくっつける機能があり、地域を団結させる。ローカリズムが可視化されたようなものです。
少子高齢化が進み、無形文化遺産となった祭りも保存・伝承が課題と指摘されますが、むしろ活用を呼びかけたい。日本文化の力をまちづくりに生かし、地域経済を支援する。古い山車や屋台を修理して長く引き継ぐのはもちろん重要ですが、登録されたのは「無形」の文化遺産です。祭りを受け継いできたコミュニティー力こそが、ユネスコに認められたと考えています。その力を生かしたい。
時代や社会の変化に対応しながら、どうやって祭りを維持、発展させるか。石田さんは地元の犬山祭で、今年から新たな仕組みを導入したといいます。
――連携が必要というのは?
2005年愛知万博(愛・地球博)で、愛知県内17市町から山車100台が長久手会場に集結しました。当時も保存団体同士が連携するという発想はありませんでしたが、犬山市長だった私は万博を機に、県内の山車文化を世界に発信しようと呼びかけました。
こうした取り組みは難しいか…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル