ラグビー・ワールドカップ(W杯)フランス大会の日本代表、姫野和樹主将(29、トヨタ)には、小学生の頃から通っている駄菓子屋がある。「勝つことしか考えていない。おばちゃん、見とって」。今春、地元の名古屋市の店に顔を出した際、そんな決意を口にしたというW杯。10日の1次リーグ初戦で、日本代表はチリとぶつかる。
おばちゃんたちがいてくれたから、道を間違わなかった
「おばちゃん」は、名古屋市中村区にある駄菓子屋の店主の篠村智子さん(66)。姫野選手は中学でラグビーを始めてからも、卒業まで学校近くの店に毎日のように通った。ベーゴマやけん玉などで、篠村さんが指定する技を披露すると、店で使える10円券など特典を得られた。みんな真剣な表情で挑んだ。
当時、取引先のメーカーのパンも店に並んでいた。消費期限当日の商品は午後から半額とし、日が暮れる頃に、子どもたちには無料で振る舞っていた。「午後5時を過ぎたら店にいるのは子どもたちくらい。フードロスにならないようにしていたの」。篠村さんはそう話す。
姫野選手もそのパンを楽しみにしていた一人だった。ただ、単に「おやつ」として待っていただけではなかった。8月に出版された自著「姫野ノート 『弱さ』と闘う53の言葉」(飛鳥新社)ではこう書いている。「子どもの頃、家にはいつもお金が無かった。恥ずかしくて悔しかったし、日々の生活も自分の将来も不安だった」
本の中では、友達や先生とと…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル