大村秀章・愛知県知事に対するリコール署名の偽造事件で、県警は20日、佐賀市内での署名の書き写し作業を請け負った広告関連会社(名古屋市)を地方自治法違反(署名偽造)容疑で家宅捜索した。県警は、多くのアルバイトが参加した佐賀での不正の経緯解明を急ぎ、計画や準備段階から関与した人物について立件する方針とみられる。
リコール運動団体事務局長の田中孝博容疑者(59)と妻のなおみ容疑者(58)、次男の雅人容疑者(28)、事務局員の渡辺美智代容疑者(54)は19日に同容疑で逮捕され、20日送検された。
署名偽造に関わった男性によると、孝博容疑者は昨年10月上旬、広告関連会社の社長に書き写し作業を依頼し、下請け会社が、人材紹介会社を通じてアルバイトを募集したという。同月20~31日にかけ、1日あたり数十人規模の人が参加して作業が行われたという。
捜査関係者らによると、なおみ容疑者と雅人容疑者は、署名用紙や書き写し元となる名簿を佐賀に届け、作成された署名簿を愛知まで持ち帰るなどし、会計担当の渡辺容疑者は、署名用紙や名簿の調達など準備作業を担ったという。県警は孝博容疑者が主導したとみている。
一方、愛知県内では、押印のない大量の署名簿に指印を押した人がいることが取材で判明している。20日にはリコール運動団体の会長で美容外科「高須クリニック」院長の高須克弥氏も、自らの秘書の女性が指印を押していたと明らかにした。高須氏は取材に「秘書に確認したところ『(孝博容疑者から)みんな協力してくれているので協力してほしいと言われ、やらざるを得なかった。悪いことをしてしまった』と認めた。私は全く知らなかったこと」と説明した。
同法の署名偽造罪の構成要件(罪が成立する条件)に、指印や押印の偽造は含まれない。県警は今回の捜査で、佐賀での不正に当初から関わった人物について立件を視野に入れる。アルバイトをした人たちは、偽造の故意や悪質性の度合いなどから、立件の可否を慎重に検討するとみられる。(村上潤治、山下寛久)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル