一度はあきらめた将棋だが、もう一度やってみよう。そう思えたのは、棋士養成機関「奨励会」時代の友人の活躍がきっかけだった。
仙台市の三浦孝介さん(25)は、奨励会に9年間在籍した。
「地獄」と呼ばれる三段リーグでは3年間戦ったが、プロへの最終関門を突破できなかった。年齢規定で26歳までがんばる道もあったが、自らの意思でやめる決断をした。
奨励会員だったころ、コンピューターとプロ棋士が団体戦で戦う「将棋電王戦」で、コンピューターの側に座って駒を動かす「代指し」を務めたこともある。
自分もプロになれる。そう信じて疑わなかった。
だが、夢は遠かった。
退会してからは資格の勉強に専念し、昨年11月、司法書士試験に合格した。
「自分が何者でもない、そんな期間がとても長かったので、本当にうれしかった」
奨励会時代の友人が将棋のアマ大会で優勝したのは、その合格発表の2日後のことだった。
友人も、別の人生を選択して自らの意思で奨励会を三段で退会した。自分と同じ境遇だった。
すごい。僕もやろう。
気持ちに火がついた。
2週間ほどその友人にインターネット将棋で特訓をしてもらい、11月下旬、朝日アマ将棋名人戦の宮城県大会で優勝。12月の南東北ブロック代表決定戦でも勝ち抜いた。
自身初めての全国大会となる朝日アマ将棋名人戦は今月18日に始まる。
勝ち抜くことが容易でないことはわかっている。それでも、また実戦の場に立てる喜びが大きい。
26歳までに四段になれなければ原則退会。そんな年齢制限の決まりがある奨励会を21歳で退会した青年に、そう決断させたものは何だったのか。元奨励会三段の「その後」を訪ねた。
3歳で祖父に将棋を教わった…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル