全国のJR鉄道網で、同じ駅に2度立ち寄らずに最も長いルートを乗り継ぐ「最長片道きっぷの旅」。その「終点」が23日、33年ぶりに変わる。これまでは肥前山口駅(佐賀県)だったが、この日に開業する西九州新幹線の新大村駅(長崎県大村市)になる。1万キロの旅程は最低1カ月。さっそく挑戦している人もいるようで、鉄道ファンの間で話題だ。
乗車券は、どんなに距離が長くても、同じ区間や駅を2度通らずにつながっていれば1枚の片道乗車券として発売される。途中で経路を折り返すのはだめで、1度通った駅に行き着いたら終わり。たった一枚のきっぷでどこまで長い旅ができるのか。「一筆書き」で列島を縦断する最長ルートの旅は、昔から鉄道ファンの憧れでもあった。
きっぷ1枚で1万キロ先へ――。1枚のきっぷで、できるだけ長く乗り継ぐ「最長片道きっぷの旅」は半世紀以上前に始まりました。記事の後半では、1万キロを超える最長ルートを数学的に証明し、その過酷な旅に挑戦した男性を紹介します。
「乗り鉄の巨人」と言われた作家の宮脇俊三氏は1978年、当時最長だった広尾駅(北海道、現在は廃駅)→枕崎駅(鹿児島県)のルートに挑戦。地球の直径とほぼ同じ1万3319キロを約2カ月かけて「乗破」したと著書「最長片道切符の旅」に記している。
2004年には俳優の関口知宏さんが42日がかりで完遂。その模様はNHKの番組で生中継を交えて放送され、マニアックな鉄旅は一躍知られるようになった。
路線の改廃で変わる「最長ルート」
かつて1万3千キロを超えていた最長ルートは路線の改廃で変わり、距離も短くなりつつある。以前はルートに入っていた四国はいま、本州とつながる路線が1本しかないためルートから外れた。
最長ルートは現在、鉄道ファンの間では、JR北海道宗谷線の稚内駅を出発して、JR九州長崎線の肥前山口駅までの約1万700キロとされる。張り巡らされた鉄路を細かく乗り継ぎ、うねるように南下するルートだ。
九州の玄関口である小倉駅に入ってからは時計回りに大分、宮崎、鹿児島、熊本、福岡の各県を通過。佐賀県の新鳥栖駅で西に折れ、長崎県の諫早駅、早岐(はいき)駅をぐるっと回り、肥前山口駅(23日に江北駅に名称変更)の終点に着く。
この「終点」が、西九州新幹…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル