多田晃子
上皇さまは23日、卒寿となる90歳の誕生日を迎えた。宮内庁によると、国内外でのこれまでの出会いを大切に、上皇后美智子さまとともに交流を続け、国民や平和に思いを寄せているという。
在位中の1997年のブラジル訪問を機に、現地の学校の生徒から毎年、日本語の作文が送られている。今年も届いた運動会の案内状や作文集にお二人で楽しそうに目を通し、側近を通じて学校に礼状を送ったという。また、かつて静養先で訪ねた農家の人々との再会を楽しんだほか、85年の外国訪問時に対面して交流が始まった日本人ピアニストの演奏会を訪れた。
お二人で規則正しく穏やかに過ごし、沖縄や平和への思いは今も強く、関連の展示に足を運ぶ。琉歌や琉球舞踊など沖縄の文化や歴史をはじめ、ハンセン病療養所などを訪問した思い出、疎開中の生活などがよく話題に上るという。
朝夕の新聞やニュースを見て国民生活に心を配り、地震が発生すると、テレビの速報で被災状況を確認する。被災地のその後を心に留め、とりわけ原発事故による放射能汚染でいまだ帰還困難者がいる福島県の状況を案じている。今年の宮城県石巻市内の神社での東日本大震災物故者慰霊祭では、お二人が天皇、皇后両陛下時代に被災者に思いを寄せて詠んだ歌を歌詞とする祭祀(さいし)舞が奉奏され、後に届けられたDVDでその様子を見たという。
アフガニスタンなど、訪問当時と社会情勢が一変している国について、外部の識者から説明を受けたこともあるという。
夕食後は側近と話をすることに加え、最近はオセロや将棋を楽しむこともある。
昨年7月に診断された三尖弁(さんせんべん)閉鎖不全による右心不全は、現在も心不全の診断指標であるBNP値がやや高く、少量ながら胸水貯留も認められるが、薬の服用や水分の摂取制限などの内科的治療により昨年末以降、比較的安定した状態が続いている。
学友で学習院中・高等科で同級だった織田正雄さん(89)は、上皇さまは若い頃から「日本人全員のための天皇だ。皆に公平でなければならない」と繰り返し話していたといい「非常に強い責任感のもと、国民に心を寄せるため、国民の生活を理解しようと努力をされていた」と話す。織田さんは「退位されて安心されているのでは。これからも健康に気をつけて過ごしてもらえれば」と話す。(多田晃子)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル