「階級闘争世代が、リブの映画に賞を出したんだって?そりゃ、歴史的な一大事よ」
東京・錦糸町の小さなライブバーに入ってくるなり、フェミニストで社会学者の上野千鶴子さん(74)は言った。
女性史研究やマイノリティー支援、反差別などの活動に携わる女性を支える「女性文化賞」の第26回受賞者が、映像ディレクターの吉峯美和さん(55)に決まった。発言は、その「祝う会」でのことだった。
吉峯さんが監督を務めたドキュメンタリー映画「この星は、私の星じゃない」は、ウーマンリブを牽引(けんいん)した田中美津さん(79)を取りあげた。そして、その作品にほれこんで「女性文化賞」の受賞者に決めたのが、女性史研究者の米田佐代子さん(88)だ。ウーマンリブ世代より上の階級闘争世代にあたる米田さんが、この映画を高く評価したことに、上野さんは驚きの声を上げたのだ。
階級闘争世代とは、主に1960年代に女性運動をしていた世代のこと。当時はマルクス主義の影響が強く、たとえ男性が主導していたとしても、階級闘争に勝てばすべての差別が無くなり、女性も解放されると考えられていた。
一方、「リブ」とは「ウーマンリブ」の略称。70年代、男性中心の社会の価値観から、女性が自ら心身を解放することを目指した。山登りにたとえれば、目指す頂上は同じでも、登山口やルートが違う。
リブは性についてもオープンに論じたことから「過激」と眉をひそめられ、階級闘争世代の女性でリブを評価した人は数えるほどしかいなかったという。
従来のイメージと違う田中さんの姿
なぜ、米田さんは「リブは私だ」と思ったのか。そして、上野さんは歴史的意義を語ったのか。レジェンドたちが語り合った会の様子を紹介します。
この映画が製作されたきっか…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル