スパナを手にした作業服姿の女性がほほえむ、一見、水道修理の広告に見えるポスター。ところが添えられた言葉は《中学生の頃の将来の夢はイルカのおねえさん》。香川県のローカル私鉄、高松琴平電気鉄道(ことでん)の電車内や駅に9月、なぞの掲示物が登場し、SNSで「自由すぎる中づり広告」などと話題を呼んでいる。
美容や学習塾、英会話……。電車の天井につるされた「中づり広告」や駅構内に貼られた「駅広告」は、鉄道で通勤、通学する人たちにとっておなじみの風景だ。ことでん利用客のそんな日常に「異変」が起きたのは今月9日のことだ。
スクープで名をはせる、あの週刊誌の中づり広告、と思いきや、ゴシックの独特の字体で記されているのは《コロナ明け4年ぶり“念願”のディズニーランド》。
踏切の安全通行を呼びかけるため、ことでんが製作した地元住民にはおなじみのポスター、と素通りしかけたら、標語部分には《お風呂入る前はいつも踊る時間があります》という意味不明なフレーズ。
これらは高松市内で初の個展を開いている若手美術家が、自己紹介や身辺雑記を「日常生活の中に存在するデザイン」に落とし込んだアート作品だという。
福岡県飯塚市の長澤花咲(かえ)さん(25)。アイデアの端緒は、京都芸術大情報デザイン学科3年時の就職活動の面接だ。自己アピールを目立たせようと「中学生の頃の将来の夢はイルカのおねえさん」などと記したポケットティッシュを作り、面接担当者に配った。
それを伝え聞いた指導教官の…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル