紙谷あかり
建築家の丹下健三(1913~2005)が設計した旧香川県立体育館(高松市福岡町)について、県教育委員会の工代祐司教育長は7日の記者会見で、解体する方針を固めたと明らかにした。工代教育長は「利活用の可能性を考えながらあり方を慎重に検討してきた。苦渋の選択」と述べた。
1964年に完成した旧県立体育館は、和船のような曲線の屋根から「船の体育館」と呼ばれ親しまれてきた。老朽化が進み、耐震改修のめどが立たず、2014年に閉館した。
解体の方針を固めた理由に、新県立体育館の建設が進んで役目を終えた▽多額の改修費用を投じて利活用できる事業がない▽民間事業者が耐震改修して持続的に活用することが困難▽前の道路が大規模な地震の際の緊急輸送路に指定されており倒壊すると危険であることを挙げた。これまで民間から意見を募ったほか、国とも協議を重ねたものの、年明けに解体の方針を固めたという。
丹下が設計した県庁東館(高松市番町)や国立代々木競技場(東京都渋谷区)が近年、国の重要文化財に指定され、丹下建築が評価される中での判断となった。工代教育長は「建築的な特徴や、戦後モダニズムの建物としての意味合いは十分に認識している」と述べ、映像などの記録を残すことも検討するという。解体方法や費用を把握するための調査実施費用として、来年度の当初予算案に約4600万円が計上される方針。(紙谷あかり)
有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル