渡辺純子
福岡、大分両県で関連死を含めて40人が亡くなり、2人が不明となっている2017年の九州北部豪雨から5日で5年となった。台風4号接近による警戒態勢のなか、住民らが静かに犠牲者をしのんだ。
死者・不明者35人と被害が集中した福岡県朝倉市では午前10時、市役所で職員らが黙禱(もくとう)をささげた。前日に災害警戒本部を立ちあげ、鳴らす予定だったサイレンは中止した。3カ所の避難所には一時、住民6人が身を寄せた。
正午過ぎには雨脚が弱まり、避難所も閉鎖された。日が暮れたころ、原鶴温泉近くの筑後川に、亡くなった人の数と同じ40個の紙灯籠が浮かんだ。企画した一般社団法人Campの多田隈宏美代表(28)は「復興に向けて一生懸命歩んでいます、と亡くなられた方に伝えたい」と話した。
豪雨直前に生まれた孫が5歳に 無邪気さに支えられ踏み出した一歩
「ばあば、カニがおるよ!」。夕暮れの田んぼに幼い兄弟の声が響く。孫たちを見守る女性は「家も畑も失って裸一貫の状態。この子たちがおったけん支えになった」。住み慣れた集落を土砂が襲った悲しみを乗り越え、ようやく笑顔を取り戻したこの5年間をそう振り返る。
3人が亡くなった同県東峰村は2年ぶりに実施予定だった追悼式を中止し、サイレンを鳴らして黙禱を呼びかけた。
朝倉市によると、住宅に大きな被害を受けた1069世帯の99%がすでに住まいを定めた。寄せられた義援金は約48億円。国が5年間で約1670億円をかける緊急治水対策事業も完了に近づく。
ただ、農地や宅地の整備はこれからという地域も多い。被害の大きかった地区では人口が半減し、解散した集落もある。コミュニティーの存続、農業の担い手不足など課題は山積している。(渡辺純子)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル