「35分の1ではない。みんな誇りを持って個々のクリエーターとしてちゃんと名前があって、毎日頑張っていた」 亡くなった石田敦志さんの父親の訴えは、閉鎖的な業界に響いているだろうか。 京都アニメーション第1スタジオの放火殺人事件からまもなく1年。この間アニメ業界は、新型コロナウイルスの感染拡大で、海外への一部工程の依存や声優のアフレコ現場の3密といった問題が噴出。放送中の作品の制作が相次いで休止され、大打撃を受けた。 そのような中、4月に再放送され、インターネット上で評判を集めたのが京アニ作品「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」。最終話放送後、事件や新型コロナの影響で2回延期した劇場版の今秋公開を発表した。 事件をめぐっては、青葉真司容疑者(42)の逮捕という進展があり、京アニも少しずつ再建への歩みを進めたように見える。しかし、アニメ制作会社の約9割が集中する東京から離れた独立独歩の路線もあって、京アニの内実を知る人は少ないのか、OBや業界人の多くは口を閉ざしたままだ。 2010年代に複数の主力スタッフの流出もあった中で、亡くなった木上益治さんらが中心となって育てた若手が台頭した作品が「ヴァイオレット-」でもある。 京アニが失ったスタッフの多くは、人柄はもとより魅力や実績も語られず、時が過ぎていく。一記者としても、ファンとしても、風化の危惧とともに、伝えきれていない悔しさを抱えつつ、1年の節目が近づいている。(尾崎豪一)
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