京都府宇治市の老舗旅館「亀石楼(かめいしろう)」が、新型コロナウイルスの影響で存続の危機に陥った。窮地を救ったのは、地元に本社を置く「京都アニメーション」のファンたち。36人が亡くなった放火殺人事件から、今月18日で1年。「京アニとともに再建を」と、ファンの支援が次々に届いた。
亀石楼は世界遺産・平等院にほど近い、宇治川の川べりに立ち、建物は約130年の歴史がある。10年ほど前から、数ある部屋の中から、わざわざ別館の和室「天ケ瀬」を指定して泊まる客が増えた。
「なんでやろ」。経営者の長男、金丸公大(こうた)さん(25)は理由がわからず、宿泊客に尋ねた。旅館がいつのまにか、京アニファンの「聖地」になっていたことを初めて知った。
旅に出た父娘が気まずい雰囲気のなか、旅館の窓越しに蛍の光をともに眺める。ぐっすり寝る娘の姿をみて、父も安心したように眠りに入る――。
京アニ作品「CLANNAD(クラナド)~AFTER(アフター) STORY(ストーリー)~」の18話。亀石楼と天ケ瀬がモデルとされる場面が登場する。わずか2分ほどだが、ファンの間では、父と娘が絆を取り戻していく重要なシーンとして語り継がれる。
CLANNAD(クラナド) ゲームを原作に、京都アニメーションがアニメ化した。無気力から遅刻などを繰り返す少年が高校でヒロインと出会い、成長していく物語。2007~08年にテレビ放送された「CLANNAD」と、08~09年に放送された続編の「CLANNAD~AFTER STORY~」がある。
金丸さんは一気に全話を視聴した。友情とは、家族とは、命とは――。ファンの間で「クラナドは人生」という言葉が広がるほど、さまざまな重いテーマが詰まった作品に驚いた。
京アニの本社がある宇治市の街並みは、2015年にテレビ放送された京アニ作品「響け!ユーフォニアム」でもモデルになった。実際の景色とそっくりな街が描かれ、その場所を訪ね歩く「聖地巡礼」がファンの間で広がった。亀石楼はその拠点として親しまれてきた。
だが、新型コロナウイルスの猛…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル