京都市伏見区のアニメ制作会社「京都アニメーション」(京アニ、本社・京都府宇治市)の第1スタジオ放火殺人事件で、青葉真司容疑者(41)=殺人容疑などで逮捕状=が事件前、宇治市を舞台にした京アニ作品「響け!ユーフォニアム」ゆかりの場所を移動していたとの情報がある。こうした行為はファンの間で「聖地巡礼」と呼ばれるが、本当に青葉容疑者も犯行直前に聖地をめぐっていたのだろうか。現地でその行動の謎を探った。(尾崎豪一)
京阪宇治駅。目前の宇治川には東西に宇治橋がかかる。昼夜を問わず車が行き交う橋の西端で、事件2日前の7月16日午後2時ごろ、青葉容疑者の姿が防犯カメラに写っていた。
ここは「響け!-」の主人公が、橋上で「うまくなりたい」と叫び走り抜けたことから、ファンが「うまくなりたい橋」と呼ぶ聖地の一つ。青葉容疑者が、犯行2日前に京アニ本社やスタジオから数キロ離れたこの地をわざわざ訪れていたことは確かだ。
これまでの府警の捜査によると、青葉容疑者は15日に新幹線で京都入りし、その日のうちに京アニの本社やスタジオを下見していたとみられる。16日にはJR京都駅近くのインターネットカフェを利用。京都市内の宿泊施設に2泊、犯行前日は近くの公園で野宿し、犯行を起こす18日朝まで宇治市や京都市伏見区の京アニ関連施設のほか聖地周辺を徒歩や電車で行き来していたとみられている。
宇治橋の西側にはJR宇治駅のほか、ファミリーレストランといった聖地が見える。青葉容疑者が周辺で最後に姿を見せたとされる宇治橋通り商店街の西端まで直線距離で1キロほどだ。
ただ、ファンならば橋の南東側に点在する喜撰(きせん)橋や宇治神社、仏徳山(大吉山)などをめぐるのが定番ルートだが、そこでの足取りは確認できていない。
喜撰橋のそばにある宇治市観光センターには、ファンの交流ノートやキャラクターのパネル展示もある。ファンであれば立ち寄りたいスポットだが、青葉容疑者がここを訪れたという情報もない。
青葉容疑者は17日、JR宇治駅から北に約2・5キロ離れた京阪黄檗(おうばく)駅近くの聖地、新茶屋踏切周辺でも防犯カメラに捉えられている。踏切は、住所を調べにくく、詳しい地図やスマートフォンを持たずに巡礼するのは難しいとされるスポットだ。
こうした場所を青葉容疑者はわざわざ選んで通ったのだろうか。黄檗駅を南東に進めば、作中の高校のモデルとされる府立莵道(とどう)高校があるが、同校を訪れたことは確認できなかった。
青葉容疑者のさいたま市の自宅の捜索で複数のスマホが見つかり、捜査本部は京都にはスマホを持ってきていなかったという見方を強めている。関東出身の青葉容疑者が何を頼りに現地をめぐっていたかは謎のままで、過去にも宇治や京都を訪れ、地理に精通していた可能性も浮上している。
「響け!-」のファンで、実際に聖地巡礼していた広島県三原市の女子大学生(22)は「ネット情報を確認もせず歩き続けていたとしたら、聖地を回る気はなかったとしか思えない」と、犯行直前の聖地巡礼説に疑問を投げかける。
青葉容疑者の自宅からは「響け!-」の色紙も押収されており、作品に何らかの関心があったことは確かだろう。しかし、どこまでファンとして作品や聖地に興味があったのか。仮に聖地をめぐっていたとしても、その直後に、なぜあんな事件を起こすことにつながるのか。謎は深まるばかりだ。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース