光墨祥吾
築110年を超え、現役の学生寮として国内最古とされる京都大学「吉田寮」(京都市左京区)の現棟(旧棟)に住む学生らに大学が明け渡しを求めた訴訟で、京都地裁(松山昇平裁判長)は16日、在寮生14人について大学の請求を棄却し、居住を認める判決を言い渡した。
吉田寮には1913年建築の現棟と2015年建築の新棟がある。大学は17年12月、現棟の耐震性に問題があるとして、寮生の安全確保を目的に18年9月末までに退去するよう通告した。一部の寮生は退去せず、大学は19年に提訴した。
吉田寮では、入寮の募集や選考を自治会が担っている。この点について大学は、在寮契約を結ぶ権限を自治会に与えたことはないと主張。また、退去を通告する際に格安の代替宿舎を用意するとしており、在寮契約が結ばれていたとしても解除されたと訴えた。
判決は、大学と自治会が締結した確約書に基づき、「入寮手続きを自治会が行う合意が成立していた」と指摘。退去通告前に入寮した14人は明け渡す必要がないと判断。通告後に入寮した3人には明け渡しを命じた。
判決はさらに、「寮生らは寮が自治会によって自主運営されていることに大きな意味を見いだして入寮している」と言及。代替の宿舎を提供するだけでは目的が達成されないと指摘した。
また、大学が依頼した耐震診断が補強案を前提としていた点などを指摘し、「耐震性能が不足していても、これを理由に契約継続が著しく困難になったとは認められない」と結論づけた。
一方、既に退寮した元寮生23人に対しては、寮内の共用スペースや個室に書籍や生活用品が残っているなどとして、明け渡しを命じた。(光墨祥吾)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル