元鶏舎だった建物は能登半島地震の揺れで、入り口部分の壁の形をとどめたまま、後ろに倒れ込むように倒壊していた。
「やっぱりつぶれたか。鶏が中にいなくてよかった」。石川県珠洲市の男性(70)は8年ほど前まではここで養鶏場を経営していた。最多で1万5千羽ほどを飼育していたのでそこに地震が来ていたら被害は甚大だっただろう。
父から受け継いだ養鶏は鳥インフルエンザの流行や設備の老朽化もあってやめていた。鶏舎はそのころから使用していなかったが、すぐ隣の倉庫を作業場にして珠洲や輪島などの小規模商店向けに卵を卸していた。
「もう年だし、これだけひどいとやめざるを得ないよ」。廃業を覚悟した男性はため息をついた。
戸棚がむき出しになり、卵の梱包(こんぽう)材やCDなどが散乱する中、釣りに使うルアーが出てきた。さおの引きが強いタイを釣るのが好きだった。市内に留め置いている小型ボートは無事だったという。
「あー釣りしたいな。いつできるかな」。珠洲の海で再び釣りが出来るのはいつになるだろうか?(西岡臣)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル