日本新聞協会の編集委員会は11日、事件や事故で多数の記者が被害者や関係者のもとに詰めかけるメディアスクラム(集団的過熱取材)が確実とみられる場合、代表取材を申し込むなど、「防止へ万全の措置を講じる」との申し合わせをした。新聞社・通信社とテレビ局からそれぞれ代表者を選んで取材を申し入れたり、各社の質問を取りまとめて代表取材をしたりすることで、取材される側の負担軽減を図る。
申し合わせでは、現場レベルでの調整がつかなければ、協会の集団的過熱取材対策小委員会などで協議することにした。
メディアスクラムについて、協会は2001年、「いやがる当事者や関係者を集団で強引に包囲した状態での取材は行うべきではない」とする見解を発表。だが、その後もたびたび問題が指摘され、報道側は対応を模索してきた。
17年に神奈川県座間市で女性ら9人の遺体が見つかった事件では、被害者遺族らが取材による苦痛を訴え、多くの報道機関が直接取材を控えた。昨年5月の川崎市の児童ら殺傷事件では、遺族が取材を拒否。2社が報道陣を代表してやりとりをした結果、遺族がコメントを発表した。
昨年7月の京都アニメーション放火殺人事件では、当初からメディアスクラムが懸念されたことから、現場の記者が集まって話し合ったり、京都府警の記者クラブで協議したりして代表取材を実施した。今回の申し合わせはこうした取り組みを今後の標準的な対応とするものだ。一方、メディアスクラムの恐れがない場合は、各社が自由に取材の努力をすることは妨げないとしている。
報道の真実性や訴求力を高めて公共の利益に資するには実名報道が重要であるものの、メディアスクラムを背景の一つとして被害者の匿名発表が進んでおり、新聞協会は取り組みを一層強めてメディアスクラムの解消に努めることとした。(林幹益)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル