絶対に、負けるわけにはいかない。
ゴングとともに、激しい打ち合いになったが、下がらない。
5月下旬、岩手県高校総体ボクシング競技女子ピン級の決勝。会場は、対戦相手が在籍する県立盛岡南高校の体育館。
「お父さんと同じ高校チャンピオンになる」
県立釜石高校3年の菊池麗(あきら)さん(17)にとって、この日がその第一歩だった。
父の拓さんは地元で伝説のボクサーだった。
釜石高校の前身の釜石南高校でボクシングをしていた。高校2年のとき、全国高校ボクシング選抜大会のバンタム級で優勝。進学した専修大でも活躍した。
卒業後は帰郷し、福祉施設で働くかたわら、母校でコーチに。教え子のパンチはかすりもしなかった。
麗さんは幼い頃から父に連れられて高校の練習に行っていた。ジムで遊んでいるうちに自然と興味を持った。部員にも、その家族にも慕われ、豪快で明るく、太陽のような存在だった父をずっと見ていた。反抗期で足が向かなかった時期もあったが、父と同じ高校に進学して、入部した。
その死は、あまりにも突然だった。
「起きろ! 起きろよ!」
麗さんが2年生になった昨年…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル