ヘイトスピーチを繰り返してきた桜井誠氏(49)が衆院選に立候補し、中国大使館前で「悪の巣窟、シナ大使館」などと大音量で演説した。しかし、大使館前では通常、静穏保持法などにより、拡声機で大音量を出すことや大規模集会の開催が規制されている。なぜ、今回はできたのか。
選挙戦最終日の10月30日午後5時ごろ、桜井氏は選挙カーの上でマイクを握って、こう声を張り上げた。
「これがシナ大使館、悪の巣窟。シナ中共(中国共産党)が武漢肺炎を日本中にばらまき、1万8千人の日本人が死んでしまった」
現場は、東京・六本木の中国大使館前だ。付近の道路の歩道には桜井氏の支持者ら約200人が集まり、多数の日章旗がはためいた。拍手や歓声、「桜井」コールもおきた。
桜井氏は東京15区に出馬し、党首を務める政治団体「日本第一党」から4人を比例東京ブロックに擁立。「消費税廃止」「所得税を0%に」などと積極財政への転換を主張し、コロナ禍にからめた中国批判のほか、日本政府が学費などを支給する国費留学生制度の廃止など排外主義的政策を訴えた。日本第一党は朝日新聞の取材に、外国人らへの差別や排斥の意図はないと説明している。
露骨なヘイト しにくくなったが……
桜井氏は在日特権を許さない市民の会(在特会)の元会長。「日本にいる韓国人を焼き尽くせ」といったヘイトスピーチをしてきたことで知られる。だが「カウンター」と呼ばれる市民の抗議が広がり、2016年にはヘイトスピーチ対策法が施行された。自治体の対策も進んだ。同法に罰則はないが、露骨なヘイトはしにくくなったとされる。
だが、公職選挙法には選挙演説などの自由を保障する規定があり、桜井氏は選挙活動を通じて公然と差別的で排外主義的な言動をしてきた。16年の都知事選では「韓国へ帰れ」などと在日韓国人を攻撃。20年の都知事選でもネットを中心に外国人への生活保護費支給の即時停止などを訴えた。
「桜井氏は選挙運動を隠れみのに差別をまきちらしてきた」とヘイトスピーチに詳しい明戸隆浩・立教大社会学部助教は説明。今回の中国大使館前での演説も、その一つとみる。
ヘイトスピーチ対策法の施行などから、排外的な活動はしにくくなっていると言われています。一方、公職選挙法は選挙活動の自由を尊重しています。どう対応すべきなのでしょうか。識者やカウンターと呼ばれる抗議活動を続ける市民らに意見を聞きました
大使館前は通常、静穏保持法…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル