彼氏は、兄の障害をどう思うのだろう?
関東地方の看護大に通う3年の女子学生(20)はずっと気になっている。兄は7歳上。発達障害があり、今は障害者雇用で企業の事務の仕事をしている。
以前、付き合った男性は、白杖(はくじょう)を持った人を見下す言い方をした。すぐに別れた。次の交際相手には話せたが、今の彼氏にはまだ話せていない。「重荷になるはず。一緒に背負ってくれるかな」と考えてしまう。
大学入学と同時に実家を出た。兄のことを考えると、「家族の一人として責任放棄かも」と迷った。ただ、当時は漠とした不安が増していた時期。将来の兄の世話はどうしよう、親が倒れたらどうしよう……。気になって落ち着かない。距離を置かなかったら、自分がパンクすると思った。
大学入学後、インターネット上の団体「かるがも 学生きょうだい児の会」に参加した。オンラインで月1回の定例会があり、将来の進路や就職活動、家族の話題などを語り合う。似た境遇の同世代と初めて話した時の安心感、うれしさの記憶は今も鮮明だ。
「周りからの『かわいそう』という視線も、まだ子どもで、家族のために何もできなかった無力感も、同じように経験した人が多かったから。みんなで笑って話したり聞いたりできれば、先の不安も悲観的になりすぎなくていいと思った」
会では、恋愛話や結婚話でいろいろな意見が出る。「(きょうだいのことを)早く伝えてダメなら切っちゃう」「理解のない相手だけど、どうしても好きで家族と距離を置いた」。自分は? 「相手と2人の将来だけを考えられればいい。でも、できない。兄のことは好きで、両親も大事だから」
消えない悩みはまだある。でも、年下のきょうだい児たちに伝えたい。「同じ立場の人は必ずいる。『かるがも』もあるよ」
支援や連携の動きが増加
近年、民間団体や医療福祉施設によるきょうだい児同士の交流や支援、啓発活動は増えている。コロナ禍を経て、ネットやSNSの活用も進む。20年前からきょうだい児支援の活動をする「しぶたね」(清田悠代理事長)は、研修や小冊子のネット公開を通して各地の動きを後押しする。今年4月10日の「きょうだいの日」には、関わる人たちが一般社団法人「日本きょうだい福祉協会」を設立。横の連携も広がっている。(上野創)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル