◇激動2019 政治社会編(10)
児童、幼児に対する虐待事件は、年々増加している。厚労省が発表している児童相談所の児童虐待相談対応件数は、90年が1101件だったのに対し昨年は8月までの速報値で過去最高の15万9850件に達した。児童虐待への問題意識が浸透し、以前は公にならなかった事案が発覚するようになったことも大きな要因だ。
なぜ虐待は減らないのか。その原因について、児童相談所に19年間勤務し現在は家族問題カウンセラーとして活動している山脇由貴子さんは「そもそも、人が苦しんでいるのを見るのが楽しいという人間はたくさんいる。中毒性も高く、犯罪者と一緒です。だから減らないんです」と分析する。1月には千葉県野田市で小4女児が父親から冷水シャワーを浴びせられるなど執ような暴行を受け続けて死亡する事件があった。残虐性の高い虐待をする親ほど子供への執着が激しく、また中毒性が高いという。
育児ストレスによる突発的な虐待も増えている。11月には千葉市で千葉県職員の23歳の父親が泣きやまない生後4カ月の長男を暴行する事件があったばかり。特筆すべきは、この父親が育休中に事件を起こしたことだ。山脇さんは「育休を取ったからといって、その父親に子育ての全てを任せられるものではない」と話す。育休制度が思わぬ悲劇につながったケースだ。
児童虐待撲滅に向け、打つ手はあるのか。山脇さんは言う。「この国に虐待の専門家はいないんです。被害児童の心理データはあっても、加害者の親の心理データはない。早期発見、早期保護しかないのが現状です」。傾向が分からなければ対策は立てようがない。現場で奮闘する児相の人員は増えているが、専門知識を持った人材はごくわずか。そのため、ずさんな対応が致命傷となったケースもある。また、保護施設もパンク状態で、保護が見送られるケースもあるという。人材と施設の充実、政策の抜本的な見直し…やるべきことはあまりにも多い。(特別取材班)
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