厚生労働省の「妊産婦に対する保健・医療体制の在り方に関する検討会」は6日の会合で、算定が一時的に見送られている妊婦加算を従来の枠組みで運用再開することは「適当でない」などとする内容の取りまとめ案をおおむね了承した。妊産婦に対する診療を診療報酬で評価する場合の具体的な要件や適切な名称などを中央社会保険医療協議会(中医協)で議論するよう促している。厚労省は、この日の意見を踏まえて取りまとめを行い、12日に開催予定の社会保障審議会・医療保険部会で報告する予定だ。【松村秀士】
妊婦加算は、妊娠の継続や胎児に配慮した適切な診療を評価する観点から、2018年度の診療報酬改定で新設された。しかし、妊婦が十分な説明がないまま加算されたり、コンタクトレンズの処方といった妊婦ではない患者と同様の診療を行う場合に算定されたりするなど、同加算の趣旨に反するような事例が散見され、当事者らから批判の声が上がった。こうした事態を踏まえ、中医協は同加算の1月からの「凍結」を決定。これを受けて、妊産婦が安心できる医療体制を充実させるための課題などを話し合う検討会が2月に設置された。
議論の取りまとめ案では、妊産婦に対する、▽相談・支援▽医療提供▽連携体制の構築▽健診や診療の評価―についての課題や主な意見、今後の方策を整理している。
このうち、診療の評価の在り方に関しては、妊産婦への診療は通常よりも慎重な対応や胎児・乳児への配慮が必要で、診療や薬の内容を文書で説明したり、産婦人科の主治医への情報提供を適切に行ったりすべきだと指摘。また、どのような場合でも妊婦を診療しただけで加算される妊婦加算を、「そのままの形で再開することは適当ではない」としている。
さらに、妊産婦への質の高い診療やこれまで十分に行われなかった取り組みを評価・推進する必要があるとしたほか、妊産婦への診療を評価する場合には必要と考えられる具体的な要件や適切な名称などが中医協で議論されることへの期待感を表明している。
妊産婦が健診以外で医療機関を受診した際の自己負担にも触れ、「これから子どもをほしいと思う人にとって、ディスインセンティブとならないようにすることが必要」とし、当事者が納得できるような仕組みにすべきだと強調。妊産婦ではない受診者との負担のバランスや政策効果も考慮して検討を続けるよう求めている。
■妊産婦医療、積極的な医療機関の「評価」を
医療提供については、さまざまな配慮が必要といった理由により、産婦人科以外で妊産婦への診療に積極的ではない医師や医療機関が一定数存在すると説明している。こうした状況を踏まえ、検討会は、妊産婦を診察する医師や、妊産婦への医療に積極的な医療機関を「評価」することを提案。その医療機関に関しては、▽妊娠に配慮した診察・薬の内容について文書を用いた説明▽妊婦の診察に関する研修の受講▽母子健康手帳の確認▽産婦人科の主治医との連携―を行っている施設を想定している。
■議論の舞台は中医協へ、要件の見直しが焦点に
議論の取りまとめ案に対し、文言の修正を求める構成員はいたが、強い反対意見は出なかった。厚労省保険局の森光敬子医療課長は会合で、「妊婦加算の算定に当たっては特に要件がなく、全ての妊婦に診療を行った場合、ある意味で自動的に加算されていた」と問題点を説明。今後の中医協では、従来の妊婦から「妊産婦」に評価の対象を広げる一方、単に診療するだけでなく、その質の高さを担保するための要件の見直しが焦点になりそうだ。
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