冷戦期、米国の核実験場にされた太平洋・マーシャル諸島のヒルダ・ハイネ大統領(72)が、朝日新聞などのインタビューに応じた。70年前にビキニ環礁で実施された水爆実験では、同国の住民や日本の漁船「第五福竜丸」が死の灰を浴びた。核兵器に反対する国として日本に連帯を求める一方、東京電力福島第一原子力発電所からの処理水放出には注文も付けた。
ハイネ大統領は10日に来日し、14日まで滞在する予定。インタビューは4日、マーシャル諸島の首都マジュロで行った。
――マーシャル諸島では1946~58年、米国が67回の核実験を行い、被害が残っています。
「土地を住めるようにし、人びとの健康を守る責任は核実験をした米国にありますが、被害を回復するための補償は足りていないのが現状です」
「日本は、広島、長崎、第五福竜丸、福島と核被害を経験しています。日本が学んだことを、マーシャルの人びととも共有してほしいです。お互いに核の影響で、物理的にも精神的にも被害を負ってきた国です。共に助け合い、核武装や核拡散に反対する立場を強めていきましょう」
「温室効果ガス排出量は世界の中で少ないにもかかわらず、私たちにどうやって気候変動と闘えと言うのですか。排出を抑えて、気候変動をコントロールしなければいけないのは大国です。行動を起こさなければいけないのは、私たちではない」
――マーシャル諸島の国会は昨年3月、日本が福島第一原発の処理水の海洋放出を計画していることに、深い懸念を表明する決議を可決しました。
「太平洋は歴史的に欧米の核実験場にされてきました。決議では『太平洋に放出するより、安全な代替策を検討するよう強く要請する』などと立場を伝えました。放出してほしくありませんでしたが、実際に始まってしまいました。本来なら、始まる前にもっと相談してほしかった。お互いを尊重し、話し、視点を共有する必要があったはずです」
「両国の間には長い歴史があり、友だちであらねばなりません。だからと言って、全てで意見が一致しているという意味ではない。本当の友とは、意見が合わない時こそ話し合えるものでしょう」
――マーシャル諸島は現在、核兵器禁止条約に署名していません。
「私は1日にあった核被害者の追悼式典で、支持はするけど、署名・批准には至らないという明確な立場を示しました。条約を核兵器廃絶を目指す一つの考え方として支持します。でも、マーシャル諸島が抱える課題を条約の方が支持してくれていると思えない」
「第6条の『被害者に対する…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル