逮捕や起訴の勾留で長期間身柄を拘束する、いわゆる「人質司法」について考えるシンポジウムが14日、福岡市の県弁護士会館であった。北九州市の病院で認知症患者の爪切りケアをめぐり傷害罪に問われ無罪が確定した上田里美さん(53)は「102日間も勾留され、時間の感覚がなくなった。早く家族に会いたいとの思いから、取調官の意に沿うような供述をした」と当時を振り返った。逮捕当初から上田さんの弁護を担当した東敦子弁護士は「身体拘束がなければ、上田さんの自供はなかったと思う。捜査当局による身柄の拘束は人格を変える恐れもあり、慎重に判断されるべきだ」と訴えた。シンポジウムでの発言を詳報する。
東 事件の特徴として挙げられるのが、爪を切った後の同じ写真を見て、感想が大きく分かれる点です。警察や報道機関は「必要以上に切りすぎている、こんなことをしたら痛いに違いない」として虐待としましたが、爪ケアの専門家は全員が「とてもきれいに切れている。上手ね」と答えました。切る前の爪は、黒く鳥のくちばしのように伸びて、靴下などに引っかかりそうな危険な状態でした。上田さん、逮捕されるまでの状況はどうでしたか。
上田 最初は看護部長から「騒ぎが落ち着くまで自宅で休んで」というような説明を受けました。病院の記者会見は自分の知らないうちに行われ“虐待”とされ、数日後、自宅に警察が来て(傷害容疑で)逮捕されました。警察官から「今日からあなたを番号で呼びます」と言われ、私に人権はなく、物扱いされるのだと感じました。
東 私は上田さんの逮捕の翌日、弁護士事務所に行ったら当番弁護士の連絡が来ていました。「危ないから切ったんです」と涙ぐむ上田さんの様子は、報道されている“悪魔の看護師”とは全然違うと感じました。上田さんは初対面の私たち弁護士をどう思いましたか。
上田 全く記憶にないです。男性だったか女性だったかも覚えていません。裁判所では「接見禁止(=刑事事件で容疑者が身柄を拘束されている際、家族など外部の人と会うのを禁止されること。弁護士は除外される)」と言われたことだけ記憶に残っています。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース