2019年10月12日、強い勢力を維持した台風19号(東日本台風)が日本列島を直撃した。長野市は13日未明にかけて千曲川の堤防決壊や越水であふれ出た濁流にのみ込まれ、死者17人(災害関連死15人を含む)、1541ヘクタールの市域が浸水する被害を受けた。あの日から4年。被災家屋の取り壊しで空き地が目立つ同市長沼地区で、浸水したある古民家の再生プロジェクトが進んでいる。
武田信玄ゆかりの土地、古民家に残る被災の跡
「米沢邸」と呼ばれるこの古民家は、かつて有力な農家の住まいだった。敷地面積は488坪(1610平方メートル)。この地域伝統の土壁の家だ。
保存に取り組む「しなの長沼・お屋敷保存会」の事務局長、太田秋夫さん(72)は「この家を地域の歴史の語り部にしていきたいんです」と語る。
長沼地区には戦国時代、武田信玄が前線基地となる長沼城を構え、江戸時代には北国街道松代道の宿場町として栄えた。明治期には養蚕が、昭和期にはリンゴ栽培が広まり、湿度が一定に保たれ、農作物の保管に適した土壁の蔵や家が、数多く建てられた。
米沢邸はかつての城下町の一角に立ち、主屋は約200年前の江戸時代に建てられたと推定される。2階建ての長屋門には、蚕のえさとなる桑の葉を蓄える小さなプールのような設備や、特産のリンゴの保存に使われた部屋が残る。
保存活動に携わる信州大工学部の土本俊和教授(建築史)は「修理の跡から、何度も地震や水害に遭いながら、柱を重ねたり、土壁を上塗りしたりして、大事に受け継がれてきたことがうかがえる。この建物が災害から立ち直ってきた歴史を持っている」と話す。
家も蔵も相次いで解体、景色が一変
東日本台風が襲来したあの日…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル