編集委員・北郷美由紀
つぶらなひとみのキンメダイのイラスト。そのわきには「守ってきたから今がある! 未来がある!!」とのメッセージ。千葉県勝浦市の今井和子さんは、地元の漁師たちが半世紀にわたり培ってきた「SDGs漁業」を、カラフルなポスターにまとめて発信しています。本屋で働いていたという今井さんは、どのように漁師たちとつながり、どんな思いでイラストを描いているのでしょうか。
今井さんがイラストで紹介しているのは、勝浦市・鴨川市・御宿町の16船団が所属する「千葉県沿岸小型漁船漁業協同組合」による、高級魚のキンメダイを取りすぎないようにする取り組みだ。
きっかけは7年前。当時本屋で働いていた今井さんは、本を紹介するイラストを描いていた。その画風に組合長の鈴木正男さんがほれ込み、「自分たちの思いを陸で発信する手伝いをしてほしい」と頼んだ。
「漁師さんが熱心に『魚を取りすぎない話』をするので、本当に驚きました」。生まれも育ちも勝浦ながら、漁業とは縁がなかったという今井さん。外房の漁師たちは、キンメダイを釣りすぎないよう操業時間は1日4時間に限り、漁具もエサも制限している。しかも産卵期には、みんなそろって3カ月も漁を休んでいるという。「え、本当に? 初めて聞いた時は、耳を疑いました」
外房の「取りすぎない漁業」の始まりは、半世紀前にさかのぼる。カツオやスルメイカ、カジキ、サバ……。以前は季節ごとにいろいろな魚介がいたが、だんだん取れなくなった。キンメダイに船が集中する事態を受け、漁師たちは自主ルールを厳しくすることで乱獲を防いできた。操業時間を短くしたり、針の数を制限したり。知れば知るほど、今井さんは「この取り組みを知らせなくては」との気持ちが強くなった。イラストが得意で、学生時代はいつも学級新聞やお知らせづくりを任されていた。特技を生かす場所が見つかった。
それからは、漁師と研究者を質問攻めにしながら猛勉強。インパクトのあるイラストと簡潔な文章で、漁師の実践と小規模漁業を取り巻く課題を「外房漁師のつぶやき」と題して発信している。
「次の時代のために非効率漁…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル