国立公園内なのに環境省の許可を得ないまま樹木の伐採ができるのか-。北九州市内の自然保護団体からそんな疑問が寄せられた。現場へ行くと、直径60センチほどの樹木も伐採されていた。場所は門司区の和布刈公園。市が管理する都市公園と国立公園が重なる特殊事情が、許可の必要性が「曖昧」となる背景にあった。
【写真】関門橋の「景観改善」を目的とした北九州市による伐採跡
同公園は古城山(標高175メートル)などからなり、県内で唯一の国立公園(瀬戸内海国立公園として1956年指定。約46ヘクタール)内に含まれる。山頂には門司城跡の石碑なども置かれ、関門橋を眼下にできる観光スポットでもある。中腹の駐車場から山頂まで歩道が設けられている。
野鳥の会北九州支部から2月、「北九州市が国の許可を得ないまま国立公園で伐採しているのではないか」との一報があった。国立公園の「第2種特別地域」に指定されており、自然公園法に基づき環境省の伐採許可が必要だ。同会関係者と現地を訪れたが、山頂部の広場と、山頂までの歩道周辺で伐採跡があった。
都市公園法に基づく和布刈公園の公園管理者は北九州市だ。市によると、昨年10月と、同12月から今年1月までの2期間で、約500万円を使って0・5ヘクタール、約330本の樹木を伐採。市緑政課は「山頂から関門橋を見通せるように繁茂した部分を剪定(せんてい)した。歩道周辺にあった危険な箇所も伐採した」と説明する。管轄の環境省福岡事務所に見解を聞くと当初、「無許可伐採で北九州市に始末書を出してもらう」と回答。同事務所の自然保護官がさらに調べてみると、公園管理者が整備目的で伐採する場合は、自然公園法の例外規定として「事前の許可が不要だった」との結論に至った。
一方で、野鳥の会による現地調査の結果、伐採種はエノキ、サクラなど10種に上った。「国立公園であり、伐採本数や場所、時期、自然環境や生息する鳥類への影響も含めて国と事前協議をすべきではないか。県の鳥獣保護区でもあるのに」と問題提起している。
環境省国立公園課によると、今回のように国立公園の特別地域と都市公園の重複地域は全国的にも多くないとみられるという。
北海道大の愛甲哲也准教授(造園学)に聞いた。一般論として、都市近郊の自然豊かな公園では「鳥の観察やランニングする人、散歩や山菜採りの裏山だと考える人など多様な考えがあり、時にあつれきが起きる」と指摘。和布刈公園の事例は「違法とは言えなくても、市は多様な意見を聞きながら丁寧な森林管理を進めるのが望ましい」と話している。(竹次稔)
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