奈良県香芝市の近鉄南大阪線・二上山駅から徒歩で5分。国道165号沿いに摩訶(まか)不思議な古民家がある。道行く人に一見廃屋かと思わせるような建物だが、中に入ると突然昭和にタイムスリップする。
日本のテレビ放送が始まって間もない頃のものと思われるテレビやローラー式洗濯機、冷蔵庫など「三種の神器」と呼ばれた電化製品。古時計や蓄音機をはじめ当時大流行したダッコちゃんやフラフープもある。それにもまして目を引くのはクラシックの軽自動車だ。昭和40年代の三菱ミニカのピックアップトラックやホンダZの360cc。またこの時代を生きてきた世代なら誰もが知っているオロナミンCの看板や映画「男はつらいよ」のポスターまでマニアも楽しめるグッズが至るところにひしめき合う。
実は計29もの様々なコーナーからなる集合店舗だ。お店の名前はMinca465。昭和レトロのアンティークを中心に扱っている。が、ただの雑貨店ではない。まるで映画の中に迷い込んだような錯覚に陥る。
この集合店舗を統括する代表の中尾憲二さん(66)が7年前に築約100年の古民家を改装して始めた。「元々は家主さんが解体してハイツを建てる予定だったんですよ」。建物内部の独特の梁(はり)や風通しの良さを気に入った中尾さんは交渉の末、賃貸契約を結ぶ。最初は1人で始めたが、お客さんの話を聞いた人たちや知り合いなどから間借りの依頼が次々と来た。その結果、雑貨とは無縁のレイキヒーリングや占い、ネイルサロン、イーネオヤと呼ばれるトルコの伝統手芸、カフェなどが混在する現在のような異空間が出来上がった。
昨年中尾さんは古民家の中庭に木材で床を張り屋根を作って展示スペースを拡張した。経費を節減するため自分で大工もやりながら約400坪ある土地を有効活用している。
「日本各地から来客があるんですよ。中には昼食を挟んで6時間も見ていく人もいます」。インスタなどのSNSでMinca465を知ったマニアたちがまったりとした時間を過ごす穴場になっている。若い人たちには見たことのない新鮮さがあり、お年寄りには懐かしい感覚を呼び起こすのではと中尾さんは話す。「ついこの間、小学校の女の子が昭和のお弁当箱と水筒を買っていきました」
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル