4月の土曜日。ホテルの大広間におかあちゃんが車椅子で入場すると、中にいた100人が大きな拍手で迎えた。「みんなマスクしてある」。おかあちゃんのつぶやきに、会場はどっと沸いた。この日は、おかあちゃんの100歳のお祝いだ。
おかあちゃんは、福岡市博多区の小料理屋「三吉(さんきち)」の落石ヨシヱさん(100)。関東大震災の前年、1922(大正11)年3月、福岡県宇美町で生まれた。呉服屋に嫁いだが経営難で、店を改造して46歳で小料理屋を始めた。店名は義父の名前だ。
夕方、開店すると、入り口近くのカウンター席にちょこんと座り、着物姿で客を出迎える。板前は45年前に長崎・雲仙からスカウトした遠縁の八木久光さん(70)。「なん飲むね」「あんたくさ、どうしたね」と客に博多弁で声をかける。
1人で来た客にはなじみの客を紹介してつなげ、転勤してきたばかりの人には、博多名物・ごまさばをお裾分け。客の箸の持ち方が悪ければ、すかさず、「そげんしてごはん食べてたら恥かくよ」と注意する。ビールが好物だが、だらしない飲み方は嫌った。
毎年7月の伝統行事「博多祇…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル