大阪選挙区(改選数4)でカギを握るのは、積極攻勢の日本維新の会。4つの議席に現職と新人の2人を擁立した。4月に大阪府知事・大阪市長のダブル選で完勝して以来、ほぼ負け知らずの党勢に陰りは見えない。
その維新との距離感に苦悩するのが公明党だ。
「この秋、増税で負担をかける以上、身を切る改革を断行する」。公明現職の杉久武(43)は選挙戦最後の日曜となった14日、JR高槻駅前(大阪府高槻市)でこう声を張り上げた。「身を切る改革」のキーワードは維新のマニフェストと重なる。杉は議員歳費の2割返上を主張している。
この日は党代表の山口那津男も駆けつけ、「激戦中の激戦。あと一押しを」と叫んだ。公示後、山口が同選挙区に応援に入るのはこれで2回目という力の入れようだ。
「常勝関西」と表現されてきた大阪での公明の集票力も、支持者の高齢化などにより昔ほどの勢いはない。大阪で一時80万票ほどあった基礎票も「毎年、万単位で目減りしている」。ある公明議員はこう明かす。
公明はこれまで維新の掲げる大阪都構想に反対してきたが、ダブル選の敗北を受けて賛成を表明。突然の方針転換は支持者の間に戸惑いを広げた。「膝詰めで(支持者に)説明して理解してもらい、選挙のエンジンがかかったのはようやく6月下旬」と公明議員。維新への「抱きつき作戦」が逆に出足に響いたとの見方もある。陣営関係者は「無党派層の取り込みを図りつつ組織票をしっかりと固めたい」という。
同様に守りに徹するのが自民党だ。当初は2人を擁立する方針だったが、吹き荒れる維新旋風を前に、元府知事で現職の太田房江(68)に一本化した。自民府連は5月以降、維新との関係や都構想の賛否をめぐって内部分裂状態となっていたが、参院選前に賛否を棚上げする形でひとまずは結束した。
府内を7つのブロックに分けた上で、地元議員らと連動して動員数や駅立ちのノルマを課し、「上意下達の維新並みの選挙戦」(自民関係者)を展開する。
知事時代の財政運営が維新の攻撃の的となっている太田だが、批判の応酬は避け、街頭では政権与党の強みをアピール。14日も大阪市内の商店街でマイクを握り、「子育て支援や女性活躍推進に力を入れてきた。これからも中小企業対策をしっかりやる」と、議員としての実績を前面に押し出した。
「反応はよくなっている。世代の幅を広げていきたい」と意気込む陣営関係者。だが「候補者を1人に絞らなかったら厳しかっただろう」とも打ち明ける。
「維新が大阪で行った行財政改革を国政でもやらせてほしい」。大阪市内の街頭に立った維新現職の東徹(52)は「改革」の必要性を強調した。維新は公示直前に新人の梅村みずほ(40)も擁立し、前回選に続く2議席確保をうかがう。
攻めの姿勢を下支えしているのは、大阪府市での行政運営の実績だ。知事と市長のポストを8年近くにわたって独占してきた維新は、ダブル選の際も前代表・橋下徹以来の改革路線の継承を訴え、維新政治への信任を得た。
所属議員をフル動員し、まんべんなく担当エリアを回るドブ板の戦いで、知名度に劣る梅村には代表の松井一郎(大阪市長)や代表代行の吉村洋文(知事)がバックアップに入る。維新幹部は「片方でも落とせば負けに等しい」と表情を引き締めた。
一方、政権批判を展開し激しく争っているのが、共産現職の辰巳孝太郎(42)、立憲民主新人の亀石倫子(45)、国民民主新人のにしゃんた(50)だ。全国32の1人区では野党が統一候補を立ててまとまったが、大阪ではしのぎを削る関係。それぞれ無党派層への浸透を狙い、街頭での演説を重ねるが、票の分散を指摘する声もある。(文中敬称略)
Source : 国内 – Yahoo!ニュース