関根慎一、川村剛志
山口壮原子力防災担当相は4日、今年の原子力総合防災訓練を東北電力女川原発(宮城県)で10~12日に行うと発表した。新型コロナの感染拡大を受け、住民は参加せず、関係機関の職員のみ約2270人で行う。昨年度はコロナ禍で開催を見送っていた。コロナ対策との両立が求められる初の国主催の原発避難訓練となる。
国が避難や屋内退避の対象とする原発30キロ圏の7市町には、約20万人が住む。当初は約400人の住民が参加を予定していたが、感染拡大を心配する地元の意向を尊重し、急きょ不参加が決まった。
住民の「代役」は県職員らが務める。バスや船、ヘリに乗って避難訓練を行う。山口氏は4日の会見で、「コロナが収まれば、住民が参加する訓練もいずれして頂ければいい」と釈明した。
国は2020年に公表したガイドラインで、避難前の検温や間隔を取って避難するといったコロナ対策を示した。宮城県を含む全国9原発の周辺地域が、緊急時対応にコロナ対策を追加したという。
放射能漏れなどの深刻事故が起きた場合、国の方針では、被曝(ひばく)を避けるため原発30キロ圏の避難所や医療機関では原則として換気をしないようにする。換気が必要な場合は、放射性物質の放出状況によって30分に1回、数分間に限るという。訓練では、職員による住民の「代役」がこうした方針に従いつつ、移動中の車内や避難所などで「3密」回避に配慮しながら避難する。
現地での訓練参加者は事前にPCR検査を受検。その後も毎日、抗原検査を実施し、避難対応の拠点となる「オフサイトセンター」に入る人数も半数に絞る。
女川原発2号機は、原子力規制委員会の審査で安全対策の基本方針が認可され、再稼働に必要な「地元同意」も得たが、住民の避難道の整備などが課題になっている。
住民の不参加について、地元の「原発問題住民運動県連絡センター」世話人の中嶋廉さんは「コロナの流行時に事故が起きたらどうするのか。避難計画はコロナにも弱いと示された」と話す。女川町は「住民に負担を掛けたくないと判断した」(同町企画課)と説明している。
東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センターの関谷直也准教授は「自然災害とは異なり、原発事故の避難では感染と被曝リスクの比較考量が必要になり対策が複雑。感染が収束した段階で、改めて住民も参加した訓練を行うべきだ」と指摘する。(関根慎一、川村剛志)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル