「『女性の人権のため』に女性活用をするから、日本はダメなんだ」
当時48歳で日本IBM初の女性取締役になった内永ゆか子さん(75)は、女性活用のあり方についてこう断言します。今から20年前、朝日新聞土曜版「be」の「フロントランナー」初回に登場した内永さんは、今も女性活躍のためのNPO法人理事長を務めるなど、時代の先端を走り続けています。そんな内永さんに、聞きました。この20年間、「日本の女性」を取り巻く風景は、変わりましたか?
――お手元に20年前の「be」があります。ご自身の記事に「男性だけで世界に通じますか?」という見出しが躍っていますね。読んでみていかがですか。
一生懸命やったのに…下がってしまったジェンダー指数
私、今と同じことしか言っていないですね。むしろ、日本社会は退行している。男女平等を示す世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップ指数」などは、順位が落ちています。
――指数の発表が始まった2006年、日本は115カ国中79位だったのに、今は156カ国中120位。ショックです。
この10~15年の間、日本も女性活用を一生懸命やりました。でも、世界はもっと、ものすごい力を入れて推し進めてきた。
なぜか? この間、テクノロジーの進歩によりビジネスのスピードがどんどん速くなり、世界が狭くなっていった。もはや改善活動などでは競争に勝てない。ビジネスモデルを変えないと、勝てなくなってきたんです。成功体験を同一にする、過去の成功体験の額縁からしかものを見ていないリーダーばかりが集まっても、ビジネスモデルは変えられない。意思決定するグループの中に、違う価値観やバックグラウンドを持つ人間を入れる必要があるということで、戦略として女性をはじめとした多様な人間を、世界は経営に入れるようになった。世界共通のマイノリティーで一番数が多いのは女性ですからね。ビジネスの世界の人間は多様性が戦略だと気づいたのです。
――「成功体験を同一にする、過去の成功体験の額縁からしかものを見ていない」とは。
「電話機で成功した人たち」だけじゃダメ
電話を例にとりましょう。黒電話から始まって携帯電話、ガラケーが生まれ、スマホになりましたが、今、スマホを電話機だと思っている人はいませんよね。当然電話機の機能はありますが、もはや世界とつながるための「私のプラットフォーム」で、そこでビジネスを受け、友達も作る。電話機を提供している人がビジネスリーダーだと思っていたら、違った。プラットフォームの仕組みを提供している人間だったわけです。同じ成功体験、価値観だと電話機止まり、同じビジネスモデル止まりなんです。
日本はまだ、女性活用を「女性の人権のため」と思ってやっている。政府が言っているから、とかね。それはもちろん大切ですが、女性のためにと思ってやると間違える。そうじゃなくて、違う価値観を入れ、多様な人材を生かすための最初の一歩なんだと。経営戦略の手法としてやらないと、女性活用は進まないんです。女性のための女性活用としてやるからうまくいかない。
■経営戦略としての女性活用…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル