これほど穏やかな青空の3月11日はめずらしい。
午後3時、宮城県石巻市を流れる北上川の川べり。青木恭子さん(62)は、3メートルほどに育った桜の木をなでて、つぼみのついた枝を見上げた。
息子の謙治さん(当時31)は10年前のこの時刻、ぎりぎりまでここで避難誘導にあたったはずだ。2年ほど前に桜を植え、名前を刻んだ石板を置いた。
私(57)が青木さんの取材を、3月のこの日にするのは初めてだった。
私が「手を合わせないんですね」と言うと、「息子が確かに生きていた場所だから」と。遺体が見つかった沼に寄って花を置き、帰途についた。
青木さんには同じ境遇の仲間か…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル