愛知県南知多町の内海地区で名古屋市の業者が10月下旬に始めた太陽光発電設備の設置工事が、広範囲の山林伐採につながり、町長を始め町民が業者への不信感を募らせている。造成工事での樹木の無断伐採や町道の損傷などが多数確認され、河川への土砂流入などによる水害への懸念も拭えていない。業者は町の求めに応じ、今月18日に初めて説明会を開いたが、来年1月21日までの通電を目標に事業を急ぐ構えだ。
名古屋市北区に本店を置く「ディーエスエス」(DSS)の木下誠剛(まさよし)社長ら2人が18日夜、内海防災センターで町民ら約200人を前に計画を公表した。
町には太陽光発電について環境や景観の保全、災害防止などを図るガイドラインがあるが、家庭用を念頭に、発電出力10キロワット未満は届け出を不要としていた。D社は9・9キロワットの小規模発電所を多数設置する計画だったため、町も全体像を把握できず、説明会は、石黒和彦町長ら町幹部や担当職員、町議も出席する異例の事態となった。
木下社長らによると、「西鈴ケ谷・口鈴ケ谷」「奥遠廻間(おくとうばさま)」など5地区の土地計約8万平方メートルを買い、小規模発電所91カ所などを設置し、複数の貯水池を造る。所有者は、D社と、個人事業主としての山崎貴充常務ら社員3人の計4者に分ける。太陽光パネル下で営農をするが、生み出した電力の8~9割は売電すると説明した。
山下社長らは、複数の無断伐採や町道17カ所の損傷、購入していない土地への土砂侵入などを認めて謝罪したが、故意ではなく「誤伐採」「従業員への指示の誤り」と説明した。
「再生エネではなく破壊」 町民から批判やまず
町民からは「どう見ても小規模ではなく大規模開発。規制逃れだ」「再生エネルギーではなく破壊だ」「こんな事業で一体、誰が幸せになるのか」などと批判がやまず、大規模開発と同等の環境影響評価の実施など、計画の見直しを求める声が相次いだ。
会場には、契約代金が支払われていないのに樹木を伐採されたと指摘する地権者もいて、木下社長らが地権者名を尋ねて振り込みを約束する一幕もあった。
町は、D社が奥遠廻間地区で届け出た約0・78ヘクタールを超え、約1・8ヘクタールを伐採したことも確認した。石黒町長は取材に「町が踏みにじられた。対応が後手に回っていて町民に申し訳ない」と話した。町は今後、町民の意見や疑問を吸い上げ、D社から得た回答を町のウェブサイトで公開する。ガイドラインのあり方も見直す。
木下社長は「町民を不安にさせ、大変申し訳ない。指摘についてはできる範囲でやる」とする一方、「計画の見直しはできない。認められた(経済産業省のFIT認定)事業を粛々とやっていく」と話した。(嶋田圭一郎)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル