高木文子
インターネットで入手でき、覚醒剤など違法薬物に導かれる「ゲートウェー・ドラッグ」(入門薬物)とされる危険ドラッグ。岐阜県警科学捜査研究所の酒井優治・主任研究員(30)が、使い続ければ統合失調症やうつ病、認知症のような症状を引き起こす仕組みを明らかにした。「取り返しのつかない危険性がある」と薬物の怖さを訴える。
危険ドラッグは脳の神経細胞に働きかけ、一時的な興奮や幻覚、性的衝動を引き起こす。捜査当局が取り締まりを強めるなか、製造者は成分構造を次々に変えて、規制の網をかいくぐってきた。
研究では、危険ドラッグの毒性について、成分の一種「ピロリジノフェノン誘導体」に着目した。実験では培養細胞を使い、9種の化合物を調べた。覚醒剤より強い毒性を示す化合物もあった。
化合物が神経細胞を死滅させたり、毛細血管の組織を壊すことで脳を薬物から守る「バリアー」が失われたりして、精神疾患のような症状を引き起こす仕組みを明らかにした。
酒井さんは「一時の快楽のために摂取することの恐ろしさを、若い人に知ってもらいたい」と話す。
世の中に役立つ科学の研究を志して、岐阜大学大学院の修士課程を中退して科捜研に入った。DNA鑑定などに携わりながら、3年前からは、勤務後に岐阜薬科大学に通って共同研究を続けた。論文3本が海外の科学誌に掲載。3月には薬学の博士号を取得した。
県警によると、科捜研に所属する研究員18人のうち酒井さんを含め8人が博士号を持つ。博士号の取得率(44%)は、全国の都道府県警で2番目に高い。(高木文子)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル