埼玉県戸田市立美笹中学校で3月、校内に侵入した少年(当時17)に切りつけられて大けがを負った男性教員が19日、東京都内で開かれた集会で、子どもを守るために教員が被害にあった際の支援制度が不十分だと訴えた。
事件は3月1日昼に発生。教員によると教室で試験監督をしていた際、刃物を持った少年が入ってきてもみあいになったという。
少年は、殺人未遂容疑で逮捕・送検され、7月にさいたま家裁が少年院に送る決定をした。決定などによると、少年は無施錠だった正門から侵入。教員の胸などを刃物で刺すなどした。
この日の集会は、学校の教員の働き方を考える有志団体が開いた。
被害にあった教員によると、手術は約8時間にわたり退院した今も左腕にまひが残っている。「神経が切れていて十分に動かず、ワープロも打てない」といい、すでに学校に復帰しているが、今もリハビリを続けているという。
公務員の労災にあたる「公務災害」と認定されており、治療費は地方公務員災害補償基金県支部から支給される。一方、被害の補償を求めて少年側の弁護士と示談交渉をした際は、自力で対応したという。
県教育委員会は、教員が事件で被害にあった場合などについて、示談交渉などは当事者同士で対応してもらっているとする。男性教員は県教委の支援が欲しかったとして、「教員が被害者になった時の支援制度が必要」と話した。
集会を開いた団体の代表で、愛知県の小学校教諭の加藤豊裕さんは「戸田のような事件は全国で起こりうる。教員の補償のあり方を多くの人に考えてもらいたい」と話した。
団体は、児童生徒の命を守るために教員が被害を受けた場合の支援制度の充実を求め、オンラインサイト「Change.org」で署名を募っている。2万8千人を超す署名が集まっており、県知事や県教委に提出するという。(山田暢史、浅野真)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル