岩本修弥、井岡諒
神戸市北区の住宅地で2017年、親族と近隣住民計5人を殺傷したとして、殺人や殺人未遂などの罪に問われた無職竹島叶実(かなみ)被告(30)の裁判員裁判の初公判が13日午前、神戸地裁(飯島健太郎裁判長)で始まった。竹島被告は起訴内容を認めた。弁護側は、事件当時、被告は罪に問えない心神喪失の状態だったとして無罪を主張した。
起訴状によると、竹島被告は17年7月16日朝、神戸市北区有野町の自宅で、同居していた祖母の南部観雪(みゆき)さん(当時83)と祖父の達夫さん(同)を金属バットで殴ったり、包丁(刃渡り約16センチ)で突き刺したりして殺害。母親(57)も同様に殺害しようとして、重傷を負わせたとされる。
その後、2軒隣の民家の敷地にも侵入して、辻やゑ子さん(当時79)の首などを包丁で突き刺すなどして殺害。さらに別の民家の敷地内にあるアヒル小屋にも侵入し、中でアヒルの世話をしていた女性(69)を複数回刺し、殺害しようとしたとされる。
竹島被告は、包丁と金属バットを持ち、近くの有間神社付近にいたところを現行犯逮捕された。その際、兵庫県警に「誰でもいいから攻撃しようと思った」という趣旨の供述をしたという。神戸地検は2回にわたって計約8カ月間、刑事責任能力を見極めるための鑑定留置を実施。刑事責任能力を問えると判断し、18年5月に起訴していた。
刑事責任能力は、善悪の判断や行動を制御する能力のこと。刑法39条は、この能力が著しく減退した「心神耗弱」なら刑を軽くし、能力がない「心神喪失」は罰しないと定める。
今回、「心神耗弱」にとどまるとする検察側に対し、弁護側は「心神喪失」を主張。刑事責任能力の有無や程度が争点となる。(岩本修弥、井岡諒)
初公判を控え、亡くなった辻やゑ子さん(当時79)の遺族と負傷した住民女性(69)が、代理人弁護士を通じて報道各社にコメントを寄せた。
辻さんの長女と長男は「事件から4年以上が経ちましたが、今なお、信じられない、悪い夢なら覚めてほしいという感覚は変わっておらず、母を失った悲しみは深まりはしても、薄れはしません」との心境をつづった。
負傷した女性は「事件のことを考えないでおこうと努めてきましたが、今でも忘れることはできません。被告人には裁判を通じて事件に向き合って、反省してほしい」と訴えた。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル