刈り取り前の稲穂が揺れる田んぼに沿って続く土手が、約500メートルにわたって朱色に染まっている。
鹿児島県伊佐市の川沿いに咲き誇るヒガンバナ。近くに住む上田(かんだ)篤さん(91)が14年前からたった一人で育てている。
コメやネギはつくってきたが、「花なんて興味なかった」という上田さんがヒガンバナにのめり込んだのは、長年連れ添った妻の死がきっかけだった。
上田さんが語る、妻・咲子さんとのなれそめは、ちょっと普通ではない。
1965(昭和40)年のことだ。別の女性との間で進んでいた縁談を一方的に断られた。
初対面で「あんたをもらいに来た」
「あんたのような男と結婚する女はいない」と相手に言われ、「今日のうちに嫁をもらうぞ!」と啖呵(たんか)を切ったその帰り道、農協の知り合いのところに寄り、やけ酒を飲んだ。
そのとき知り合いが紹介して…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル