図書館司書の仕事は人工知能(AI)で代替可能になる―。そんな意見が先の国会で取り沙汰された。蔵書管理や貸し借りという司書の業務からの指摘とみられるが、学校の図書館は子どもにとっての居心地の良さから「第二の保健室」と呼ばれる側面がある。「あの場所に命を救われた」。話に耳を傾け、寄り添ってくれる司書がいる図書館は、生きづらさを感じる子の切実なよりどころとなっている。
「男にこびを売っている」。A子さん(16)が学級を息苦しく感じ始めたのは、根も葉もないうわさを流された2年前だった。
当時は福岡県内の中学の2年生。うのみにした級友もいたらしく、ノリの良い生徒を中心に陰口が広がった。3年に進級すると、親しい友人とクラスが離れ事態は悪化。近づくと避けられるなど、なぜか級友から攻撃の標的にされた。
心の安らぎを得られたのが図書館だった。集う生徒は学年もばらばら。一斉行動や結束も求められず、誰かに趣味や価値観を合わせる必要もない。司書は悩みを親身に聞いてくれた。担任に伝えるのは嫌だった。「解決しようと動かれても、問題がこじれる状況しか想像できなかったから」
1人でいても自然な図書館、居心地よく
2018年度、全国の小中高などにおけるいじめの認知件数は54万件を超えた。不登校の小中学生は16万人以上で、いずれも過去最多だった。
別の中学に通ったB子さん(16)は学級で孤立したストレスからリストカットを繰り返した。苦悩を唯一吐き出せたのが図書館で出会った友人や司書。「図書館で命が救われた」と真剣に思う。「体調が悪い人」向けの保健室は行きづらい。「何かあった人」が利用するスクールカウンセラーはハードルが高かった。1人でいても自然な図書館は居心地が良かった。
司書には、生徒との信頼関係を構築しやすい面もある。「読んだ本の感想に生徒の心情や悩みが透ける」と、九州北部の中学校に勤務経験がある男性司書は話す。日常会話を端緒にいじめや不登校、性被害などの声を受け止めてきた。
ただ、校長には「それは司書の業務ではない」と注意され、生徒の図書館利用も制限された。「蔵書管理や貸し借り業務だけが役割ではないのに…」。男性司書は唇をかむ。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース