大きなクスノキが茂る静かな境内で、30代の女性は一心に祈っていた。
――どうにかして会社を辞められますように。
パート先の上司が代わり、時短の条件が守られなくなった。子どもの運動会の日にもシフトを入れられた。
「土日は休みという約束でしたが」とその上司に言うと、「わがままだ」と一蹴された。それなら辞めたいと伝えても、「他の社員に迷惑がかかる。無理」と取りあってもらえない。
私が悪いのかな……。どうすればいいんだろう。
ある日、インターネットで見つけた。
「最強の縁切り神社」
その神社は九州・福岡にあるという。次の休日、わらにもすがる思いで車を飛ばした。
社務所で御守(おまもり)を手に入れ、短冊のような「願い文」に願いを書いて結びつけ、小さな祠(ほこら)の前で真剣に祈り……。
御守を肌身離さずもっていようと制服のポケットに縫い付けた。
すると、次第に「わがままなのはこっちじゃなくて、あっちかも」と思えてきた。「もう無理。何を言われても切ろう。お守りを持ってるけん大丈夫」。自然と自信が湧き、気がついたら、上司に言いたいことが言えるようになっていた。
そして3カ月後、スッパリと会社を辞めた。「辞めた瞬間、体が軽くなりました。今は幸せです。御利益がありました」
県外ナンバーも続々
パワハラ上司を異動させてほしい、夫と不倫相手を別れさせてほしい――。そんな「縁切り」に御利益があるという神社が、ネットで話題になっている。
「すっかり悩み相談所になりました」
福岡市から車で約1時間。筑後平野の田んぼに囲まれた福岡県朝倉市林田の美奈宜(みなぎ)神社を訪ねると、内藤主税(ちから)宮司(69)は笑顔で迎えてくれた。
1800年前に神功皇后が創建したとされる由緒ある神社。本殿の裏に、境内社のひとつ・白峯神社が鎮座する。
この小さな社が、話題の「最強縁切り神社」だという。
縁切りをうたう神社は全国にあるのに、なぜ、ここが「最強」と言われるのだろうか。
福岡県朝倉市にある小さな神社が、「最強の縁切り神社」としてインターネットで話題になっているそうです。「最強」と言われる理由を探りました。
参拝客が急に増えたのは20…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル